今回は、茨城県つくば市を中心に活動をしている、認定NPO法人キドックスさんを取材しました。
今回取材した方
今回は、認定NPO法人キドックスの代表、「上山琴美」さんにお話を伺いました。
キドックスは、動物介在活動や若者支援活動を通して、地域社会に貢献している団体です。
団体を立ち上げる前のお話
上山さんがキドックスを立ち上げる前は、福岡で会社員として勤務し、社会人経験を積んだ後、26歳という若さで「キドックス」を設立しました。
キドックスは、動物介在活動を基盤に、引きこもりや不登校の若者に支援を行う施設を運営しており、約13年活動をしています。
団体を立ち上げた背景
上山さんは高校生の頃から人と動物について興味を持ち、大学生の時には不登校や非行少年の学習支援と保護犬施設でボランティア活動をされていました。
社会人時代には福岡県で売上管理や採用など店舗運営を学び、地元茨城県で自立援助ホームで働いた経験もあったそうです。
高校時代から考えていた「プリズンドッグプログラム」のような活動を日本で実現したいという夢が団体設立の原点でした。
活動地を見つけるために多くの方々にキドックスで活動する内容を話し、土地を貸してもらう機会に恵まれ、土浦市の築100年の古民家から活動がスタートしました。
2022年には現在のつくば市に拠点を移し現在も活動を続けています。
プリズンドッグプログラムとは?
プリズンドッグプログラムとは、刑務所においてワンちゃんを介在させたプログラムで、受刑者がワンちゃんをお世話することで、責任感や忍耐力を養ったり、就労につながるスキルを得たりするなどのメリットがあります。
動物介在に着目したきっかけ
上山さんが「動物介在」に注目した理由には、2つの大きな背景があります。
1つ目は、ご自身が人間不信に陥った経験や、親しい友人が非行に走ったことです。
これをきっかけに、青少年の心理や犯罪心理に関心を持つようになりました。
2つ目は、幼少期からワンちゃんと共に暮らしていたことです。学生時代に愛犬を亡くした際、「もっと何かできたのではないか」という強い後悔を抱いたそうです。
また、茨城県が当時、殺処分数全国ワースト1位であるという現実を知り、「ワンちゃんたちを救いたい」という思いも一層強まりました。
これらの経験を通して、上山さんは高校生の時に知った「プリズンドッグプログラム」に注目します。
日本ではまだこの活動が実施されていないことを知り、それを立ち上げたいという想いを抱くようになりました。
自身の経験や後悔が、「非行少年と殺処分される犬、双方を救いたい」という情熱へと繋がったのだといいます。
団体設立までに大変だったこと
団体設立前は資金、人脈、場所がなく、一人で企画書を作成しながら団体や企業にアプローチを重ねました。
当初はアルバイトの収入や助成金で運営し、立ち上げ後の数年間は全員がボランティアで活動を支えたそうです。
「大変なことが多いからこそ、大変だとは思わなかった」と話す上山さんから、芯の強さを感じました。
団体について
団体の名前の由来
「キドックス」は、KID(子ども)とDOG(犬)を組み合わせた造語です。
人間とワンちゃん、両方の支援を目的として名付けられました。
活動内容について
活動の中心はドッグプログラム(動物介在活動)で、里親募集や若者支援、地域交流の場を提供する「キドックスカフェ」も運営しています。
キドックスでは現在、13匹のワンちゃんと2匹のねこちゃんを保護しています(2024年12月5日取材時点)。
里親募集や社会復帰に向けた支援を行っています。
※キドックスカフェの様子:ワンちゃんと里親希望の方が広々と過ごせるように工夫されています。
活動に参加する若者の背景
若者の就労支援
キドックスでは、学校や家庭、人間関係でのつまずき、不登校や引きこもりの経験を持ち、外に出られず、所属するコミュニティを持たない若者たちの就労支援を行っています。
こうした若者たちの多くは、半年から4〜5年引きこもった後、不安定な気持ちが少し安定し、そろそろ外に出てみようと思ったタイミングで問い合わせをしてくるそうです。
最近では、カフェに足を運んで様子を見てから、その後問い合わせをするケースが増えているとのことです。
支援の対象は就労可能な15歳以上の若者となります。
小学生向けの不登校支援
家庭や友達、先生との関係への不安から、不登校になってしまう子どもたちが多いそうです。
そうした子どもたちは、若者と同じように自分の所属する場所を見つけられず、フリースクールなどの環境にもなじめないケースが少なくありません。
しかし、「ワンちゃんやねこちゃんがいるなら行ってみたい」と前向きな気持ちを抱く子どもたちがキドックスを利用することが多いようです。
プログラムの設計へのこだわり
動物と人の双方にメリットがあることを最優先とし、片方に負担が偏らないように細部まで配慮しています。
特にキドックスカフェでは1頭のワンちゃんに対して1組が接するスタイルを取り入れ、ワンちゃんの負担を軽減しながら社会化を進める仕組みを設計しています。
また、触れ合いの前にはワンちゃんの経歴や性格を記したアルバムを読むことで、動物への理解を深めた上で活動に参加できるよう工夫されています。
こうすることにより、ワンちゃんの社会化も進み、譲渡につながることにもなります。
プログラムの概要
午前中は朝礼後、ワンちゃん・ねこちゃんのシェルターの掃除から始まります。
午後はコミュニケーションタイムとして担当のワンちゃんとコミュニケーションを取り、散歩をして振り返りをして終了です。
詳細が気になる方は、ぜひキドックスさんのHPから問い合わせてみてください!
https://kidogs.org/contact.html
上山さんの実体験
かつて、社会人として働き始めたものの、人間関係に悩んで引きこもりがちになった方が、キドックスのプログラムを利用し始めました。
その方はおとなしい性格のワンちゃんを担当することになりましたが、「自分の気持ちを相手に伝えることができない」という課題を抱えており、最初はワンちゃんに対しても何も伝えられない状況でした。
それでも、どうしたらワンちゃんの行動が変わるのか、試行錯誤を繰り返していきました。
やがてその過程で、「自分がちゃんと相手に伝えないと、何も変わらない」ということを学び、自ら相手に働きかける方法を少しずつ身につけていきました。
プログラムの終盤には、上山さんのアドバイスをただ受け入れるだけでなく、自分の考えをしっかりと伝えられるようになりました。
そして最終的に、自信を持って社会復帰を果たすことができたのです。
初めてでも安心したプログラムの設計
大・中型犬メインのキドックスでも、初心者の方でも安心して参加できるシステムがあります。
ドッグトレーナーがワンちゃんの状態に応じて指導し、参加者がレベルに合ったワンちゃんを担当できるように工夫されています。
大型犬・中型犬を飼育したことがなくても安心して参加できる体制が整っていますよ。
現在注目のプロジェクト
最近では猫部というものが立ち上がり、小中学生9人が参加しています。
ねこちゃんはワンちゃんと違って自由で、ねこちゃんのアクションを想像して、お世話に励んだり、SNSでの啓発活動に取り組んでいます。
また、動物と直接触れ合わない動物介在を企画しており、読書、アートのワークショップなども今後行っていく予定だそうです。
これからについて
嬉しいことに、キドックスさんの活動に共感し、同じような取り組みをしたいと考える方が大勢いるそうです。
現在もプロジェクトが進行中ですが、同じ活動を希望する方々にそのノウハウや仕組みを共有し、さらに活動の幅を広げていきたいとおっしゃっています。
しかし、敷地や費用といった課題もあるため、解決策を模索している最中とのことです。
これからの展開がとても楽しみですね。
上山さんの思う、動物介在
触れ合い方が不適切だと威嚇するワンちゃんもいますが、相手が嫌がることをしたら怒るということを学ぶこと、それも「動物介在活動」のひとつの側面だと捉えています。
キドックスでは、野犬だったり、人に慣れておらず怯えているワンちゃんたちも積極的にケアしています。
状態の悪いワンちゃんがケアを受けることで次第に変化していく、その過程自体も「動物介在活動」の価値のひとつだと考えています。
また、若者たちにとってはワンちゃんたちに携わり、その変化を見届けたり、譲渡へとつながる喜びを実感できることが大きな魅力です。
その経験が「動物介在」の醍醐味なのではないかと感じています。
もちろん、安全性も非常に重要です。特に子どもたちが怪我をしないよう、プログラムを慎重に設計しています。
安全を確保した上でワンちゃんと触れ合うという活動も、とても意義深いものだと思っています。
認定NPO法人キドックスさんに寄付をする
寄附は以下リンクから可能です↓↓
https://congrant.com/project/kidogs/6456
編集後記
キドックスの活動を取材する中で、「人と動物の双方が幸せになる」という信念が全てに貫かれていると感じました。
言葉が話せない動物たちが活動の中で抱えるストレスへの配慮や、支援者となる若者たちへの丁寧な接し方など、多くの配慮がされていることに感動しました。
困難を抱えている若者や動物たちのため、ぜひ一度キドックスを訪れてみてはいかがでしょうか。
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