大きな体とやさしい表情が魅力のセントバーナードは、アルプスの山で遭難者を救助していた犬種です。
アニメ「アルプスの少女ハイジ」に登場するヨーゼフのモデルになった犬としても有名ですね。
この記事では、セントバーナードの特徴、性格やしつけの方法といった飼い方のコツをまとめました。
目次
セントバーナードの基本情報について
歴史
セントバーナードの祖先は、ローマ軍によりアルプスに持ち込まれたマスティフ系の大型犬です。
雪深いアルプス山中にあるサン・ベルナール僧院で17世紀中頃より飼育され、雪山で遭難した旅人の救助に活躍しました。多くの人々を凍死から救ったことで、19世紀にはセントバーナードは救助犬として名声が広まりましたよ。
1887年6月2日に開催された国際畜犬会議で正式にスイスの犬種として公認され、国犬として愛されています。
大きさや体重の特徴
体高 60~90cm
体重 50~91kg
被毛 ダブルコート
被毛カラー 白にレッドブラウンの班など
セントバーナードは体高60~90cm、体重50~91kgほどに成長する大型犬です。全犬種の中で最も重量があり、体重が113kgに達することもあるようです。
外見の特徴
「筋肉質ながっしりとした体型」「大きめの垂れ耳」「太くて長い尾」が特徴的です。
被毛
被毛はダブルコートで、硬い短毛が密集して生えている「スムースタイプ」と直毛またはウェーブがかったほどよい長さの「ロングタイプ」の2種類です。
被毛カラーは、白地に赤みがかったブラウンの斑や、ブラウンに白い斑がある個体がいますよ。
セントバーナードの性格について
性格
温厚
我慢強い
甘えん坊
用心深い
セントバーナードの性格は、「温厚」「我慢強い」「甘えん坊」「用心深い」などです。
忍耐強く穏和
セントバーナードは忍耐強く、穏和な性格を持っています。ストレスや緊張に対しても冷静に対応し、怒りや攻撃的な行動を起こすことは少ない犬種です。我慢強くてのんびりしているので、子どもとも安心して遊ばせることができますよ。大きな体なのに甘えん坊というギャップに惹かれて飼い始める方が多いです。
賢く用心深い
セントバーナードは非常に忠実で愛情深く、一般的に穏やかで落ち着いた性格を持っています。冷静で平和的な存在ではありますが、飼い主や家族を守るために勇敢に行動し、侵入者に対して警戒心を示すことがあります。動きは遅くおっとしりした印象ですが、用心深く警戒心をあらわにする一面も持ち合わせています。
セントバーナードの食事について
総合栄養食と一般食
ドッグフードをメインで与えたい場合は、「総合栄養食」と表示されているドッグフードを選びましょう。これは水と一緒に与えるだけで、健康が維持できるドッグフードのことです。選ぶ際は原材料を必ず確認しましょう。主原料が「肉類」であることが望ましいですよ。
手作り食をメインで与えたい場合は、「一般食」と表示されているドッグフードがおすすめです。いわば「おかず」のようなものであり、トッピングとして利用することで手軽に栄養を追加することができます。
食事量
普段与えているドッグフードの裏面に記載されている量をあげるようにします。ただ、体重との換算表は、愛犬が「理想体型」であることを前提としているので、太っている子や痩せている子は量の調整が必要となります。
便の状態も目安に
便が摘めないくらいに緩い場合は、フードを与えすぎの可能性があるので量を少しずつ減らします。逆にウサギの糞のようにコロコロとした硬い便の場合は、フードの量が少ない可能性があるので量を少しずつ増やします。
愛玩動物看護師 渡邉鈴子さん
ブリストルスケールという指標があります。これは便の性状を視覚的に確認することができます。インターネットに画像が掲載されているので、便が正常か知りたいときに活用することをおすすめします。
ごはんを食べない・・・どうすればいい?
ご飯を食べない場合はいくつかの理由があり、主に「好みの味ではない・食べにくい」「体調不良や季節による食欲の低下」「食器や環境が気に入らない」「ストレスが溜まっている」「病気」などが挙げられます。
この場合は、以下の方法を取り入れてみてくださいね。
トッピングをしてみる
まずはドッグフードにササミなどをトッピングして与えてみて、食欲が改善されるかを確認してみてください。新鮮な生肉を原材料に利用しているドッグフードに切り替えるのも手ですよ。
フードを食べやすくする
食べづらさが原因の場合は、飼い主さんがひと手間加えてあげましょう。ドライフードであれば、ぬるま湯でふやかして香りを立たせるのも手です。ニオイで食欲を刺激することができます。ウェットタイプとドライタイプを組み合わせれば嗜好性が高まり、また水分も一緒に摂取することができます。
食器や環境を変える
食べやすい食器に変更したり、食事する場所を変えてみるといいかもしれません。ストレスを抱えている場合もあるので、遊びや散歩の時間を増やして発散させるのもいいですね。
動物病院で診てもらう
食べない原因が病気の可能性もあります。食べたくても、食べられないのかもしれません。「好きなおやつも食べない」「ぐったりしている」「元気がない」といった様子が見られるようであれば、かかりつけの動物病院で診てもらいましょう。
セントバーナードの快適な飼育環境やお手入れについて
飼育環境
セントバーナードは室内飼育がおすすめです。暑さに弱いので、温度管理ができる環境が望ましいでしょう。また、大型犬が過ごせる広さのあるスペースかも重要です。
あまりにも狭い場合は、ストレスを感じてしまうかもしれません。ストレスを溜めると問題行動をするようになりますので、迎え入れる前に広さを確認してくださいね。
揃えておくもの
飼育スペース・ケージ
食器類・床材
首輪やリード・おもちゃ
ドッグフードとおやつ
トイレ用品
ケア用品
動物病院
セントバーナードとの生活をより快適なものにするために、「飼育スペース・ケージ」「食器類・床材」「首輪やリード・おもちゃ」「ドッグフードとおやつ」「トイレ用品」「ケア用品」「動物病院」などの生活用品や準備を揃えておきましょう。
飼育スペース・ケージ
セントバーナードは大型犬なので、広めで快適なベッドやクレートを用意しましょう。サークルは十分な広さを確保できるもので、犬用のベッドやケージ・クレートを用意しましょう。クレートとは箱状の家のようなものであり、犬にとって寝床となったり安心できるものになります。移動するときにも使え、病院へ連れて行くときや災害による避難の際にも活躍します。
愛玩動物看護師 渡邉鈴子さん
クレートは普段から慣れさせておくことで、スムーズに動物病院へ連れていくことが可能です。クレートを動物病院へ行くときにしか使用していないと、クレート=動物病院という認識になってしまいます。普段から使用することで防ぐことが可能です。
食器類・床材
ご飯を食べる時に必要な食器を用意しましょう。水のみ用のボウルとフードのためのボウルを別々に準備してあげてください。食器類を選ぶ際は「耐久性はあるか」「滑りにくくないか」「大きさは適切か」といったことを目安に探してみてください。床材についてはすべりにくい材質のものを選び、思わぬ転倒を防ぐために用意しておくと良いでしょう。フローリングの床で滑って関節を痛めないよう、すべりづらいカーペットを敷くなどの対策をしてあげてくださいね。
首輪やリード・おもちゃ
散歩や運動をするときのために、首輪やリード・ハーネスを準備しましょう。遊ぶためのおもちゃや知育玩具なども用意しておくと、遊びを通して良好な関係性を築くことができますよ。
ドッグフードとおやつ
健康管理のため、年齢に適した高品質の犬用のドッグフードを用意しましょう。初めて犬を飼育する方は、水と餌だけで栄養が賄える「総合栄養食」と書かれたドッグフードを用意するといいですね。飼育に応じて適切な量を与えるようにしてください。絶対に必要というわけではないですが、おやつも同時に用意しておくといいですね。しつけトレーニングの際に「ご褒美」として利用できますよ。
トイレ用品
屋内で飼育する際は、排泄物を処理するための犬用のトイレトレーを用意します。また、トイレトレーニングのために新聞紙やトレーニングパッドも役立ちますので、一緒に揃えておくといいですね。
ケア用品
健康と衛生を保つために、犬用のシャンプーやブラシ、爪切り、歯磨きセットなどのケア用品を用意します。
動物病院
何かあった際や健康管理のために、かかりつけの動物病院も見つけておくと安心です。獣医師の診察や予防接種、必要な薬やサプリメントなどを考慮し予算を立てておくのもいいですね。
お手入れについて
被毛ケア
シャンプー
耳掃除
歯磨き
爪切り
セントバーナードとの生活をより良いものにするためには、日々の小まめなケアが欠かせません。
被毛ケア
ブラッシングは毎日、換毛期であれば1日2回を目安に行います。スリッカーブラシで余計なアンダーコートを取り除いた後にコームで仕上げます。
シャンプー
シャンプーは月1回を目安に行います。シャンプーが終わった後は流し残しのないように、丁寧にすすぐことも忘れないでくださいね。
耳掃除
セントバーナードは垂れ耳をしており通気性が悪いので、炎症が起きている場合は悪化しやすくなります。耳掃除は、耳が汚れているタイミングで定期的に取り入れましょう。「耳の中のニオイが変」「耳垢が増えた」などいつもと違う様子であれば、病院で診察を受けるようにしてくださいね。
歯磨き
定期的な歯磨きは口腔疾患のケアに繋がります。指に巻いたガーゼで歯の表面に付着した汚れをふき取ったり、犬用の歯ブラシで歯垢・歯石を取り除いてあげてください。歯ブラシが苦手な方は、歯磨き用のおもちゃやパウダー状の食事に混ぜるケア用品も販売されていますので、ぜひ取り入れてみてくださいね。
爪切り
血管を傷つけないように、爪の先端から少しずつ切るようにします。万が一の時のために止血剤も用意しておくといいですよ。
愛玩動物看護師 渡邉鈴子さん
日々のお手入れが自宅で行うのが難しい場合は動物病院やトリミングサロンなどにお任せすることも視野にいれるといいでしょう。
セントバーナードの散歩や運動、しつけについて
散歩や運動
セントバーナードは運動が得意な犬種ではないですが、1日2回それぞれ1時間程度の運動を目安に行います。
激しい運動は「股関節形成不全」を引き起こしてしまうかもしれませんので、負担にならないよう適度に取り入れるようにしましょう。
しつけ
信頼関係を構築する
褒めて伸ばす
セントバーナードのしつけでは、飼い主がリーダーであるという関係性を理解してもらうことが大切です。自分で考えて行動することができ、飼い主に従順なのでしつけはそこまで難しくないですが、やや頑固な一面もあるので時間がかかることもあります。
とはいえ、飼い主さんを喜ばせようと一生懸命になってくれるので、しつけやすい犬種といえます。少し大げさなくらいに褒めることを心がけるといいですよ。
大型犬で力が強いので、子犬のうちから散歩のトレーニングはしっかり行いましょう。
ご褒美を与える
褒めることに加えて、「ご褒美」を与えてみてもいいですね。好きなおやつを与える他、一緒に遊ぶことでもご褒美になりますよ。
セントバーナードの寿命、病気について
寿命
7~8年
セントバーナードの平均寿命は7~8年で、大型犬の中ではやや短命な方です。食事や運動管理を徹底し、少しでも長く一緒に過ごせるようサポートしましょう。
病気
悪性リンパ腫
胃捻転
股関節形成不全
セントバーナードが気をつけたい病気は「悪性リンパ腫」「胃捻転」「股関節形成不全」などです。
悪性リンパ腫
「悪性リンパ腫(リンパ肉腫)」は原因不明で対策が困難な病気なので、早期発見・治療が何より大切です。日頃から顎・脇・足のつけ根のリンパ節を中心に、全身の皮膚に腫れやしこりがないかボディチェックするといいですよ。
胃捻転
何かしらの原因で胃がねじれてしまう病気です。ねじれたことで他の臓器が圧迫され、血液の循環がうまくいかなくなり、最悪命を落とす場合もあります。原因は、食後の急な運動や大量の水のみ、早食いなどが関係しています。遺伝的な要因も持ち合わせていますが、日ごろの生活でも発症するリスクは潜んでいます。食事の回数や運動の方法について、飼い主さんがしっかりコントロールする必要がありますよ。
愛玩動物看護師 渡邉鈴子さん
早食い防止のお皿が市販で売られています。早食いが治らない場合は、購入を検討してみてもいいかもしれません。
股関節形成不全
股関節の骨の形が変形してしまう関節の病気です。犬の中でも特に大型犬に多い病気と言われています。変形した箇所が嚙み合わず炎症を起こし、痛みで動くのを嫌がるようになります。原因は遺伝的なものの他、肥満や激しい運動によって発症する場合もあります。適度な運動と、食事管理が大切です。
愛玩動物看護師 渡邉鈴子さん
股関節形成不全では、うさぎ跳びのような歩き方やモンローウォークと呼ばれる腰を左右に振る歩き方をします。このような特徴的な歩き方をしていたら動物病院を受診することをおすすめします。
個体差はありますが、心臓に関わる病気の発症率が高いことでも知られています。少しでも違和感を感じる場合は、病院でしっかり診てもらいましょう。
セントバーナードの迎え入れについて
迎え入れ先
セントバーナードの迎え入れ先は、「ブリーダー」「里親」などです。
ペットショップで販売されることはほぼありませんが、比較的ブリーダーさんの数は多いです。
迎え入れにかかる費用
およそ20~40万円
セントバーナードの迎え入れにかかる費用は、およそ20~40万円です。ブリーダーが多い犬種だけにさほど高額ではありませんが、人気のある犬種なので余裕をもって予約することをおすすめします。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
この記事では、セントバーナードの飼い方について紹介しました。
すでに飼育している、これから飼育を考えている皆様のお役に立てる情報があれば幸いです。