エストレラマウンテンドッグは羊を狼から守るために作り出されたポルトガル原産の護畜犬です。狼と遜色ないほどの力強さと大きい体が特徴の犬種です。
この記事ではエストレラマウンテンドッグの性格や特徴、寿命や病気、飼い方、しつけや歴史についてまとめました。
目次
エストレラマウンテンドッグの歴史と特徴は?
歴史
エストレラマウンテンドッグはポルトガルのイベリア半島における最古の犬種の1つとされています。古代のアジアマスティフを祖先に持ち、スパニッシュマスティフの血も引いています。
何百年にもわたって羊飼いに同伴して、牧畜の群れを率いたり、オオカミから群れを守ったりしてきました。
ポルトガルだけでなく、他のヨーロッパ諸国やアメリカなどで人気の高い犬種の一つになりました。警戒心の高さから警察犬や軍用犬としても採用されています。ペットとして飼われている個体は稀な犬種です。
出典:ブルース・フォーグル著/福山英也監修「新犬種コンパクト図鑑」
特徴
体高 62〜72cm
体重 30〜50kg
被毛 やや粗めのダブルコート
被毛カラー フォーン、ブリンドル、ウルフグレー
エストレラマウンテンドッグは体高62〜72cm、体重30〜50kgの大型犬に分類されます。
見た目
エストレラマウンテンドッグは骨太でがっしりとした体格をしており、デューラップと呼ばれるノドのたるみが特徴的です。外見が「レオンベルガー」という犬種に似ていますが、エストレラマウンテンドッグの方がやや小さく骨太です。
被毛
被毛は豊富で山羊に似た手触りをしており、やや粗めのダブルコートです。被毛の長さは短くさらりとした「ショートコートタイプ」と、長く豊かな毛を持つ「ロングコートタイプ」がいます。
「ロングコートタイプ」が持つ長いタテガミは、寒い所で首から熱が発散することを防いだり、狼に噛まれても首へのダメージが軽減されたりとポルトガルの厳しい環境に適応するために進化したものです。どちらのコートタイプも毛の密度が高く、寒さにはかなり強いです。
被毛カラーはイエローを基調としたものが中心で、フォーン、ブリンドル、ウルフグレーなどがあります。どのカラーであれ、顔と耳のブラックマスクは共通しています。
エストレラマウンテンドッグの性格は?
知的
好奇心旺盛
穏やか
警戒心が強い
穏やかで愛情深い
エストレラマウンテンドッグは知的で独立心旺盛ですが穏やかな性格で、深い愛情を示してくれます。飼い主には忠実で、家族を守ろうとする勇敢な性格も持ち合わせています。見知らぬ人には不信感が強く友好的になりにくい面もあります。そのため、子犬の頃から他の人や犬と触れ合う機会を作り慣れさせるといいかもしれません。
独立心・警戒心が強い
エストレラマウンテンドッグは独立心が強いため、しつけが中途半端だということを聞かない場合があります。子犬の頃から徹底してしつけをしておかないと、他の犬との間にトラブルを起こす可能性も。警戒心が強い一面もあり、外敵には勇敢に立ち向かう性格なので、番犬としては最適な犬種と言えます。
エストレラマウンテンドッグの寿命や病気は?
寿命
10~12年前後
エストレラマウンテンドッグの平均寿命は10~12年前後です。大型犬としては平均的です。
食事や健康を意識することで、より長い時間を共に過ごせますよ。
病気
股関節形成不全
皮膚病
エストレラマウンテンドッグが気を付けたい病気は「股関節形成不全」「皮膚病」などです。
股関節形成不全
「股関節形成不全」は、大型犬に多く発症する関節の疾患です。急激な骨の成長に筋肉の成長が追いつかなくなることで、関節部分が変形して炎症を起こします。動くのを嫌がるようになったり、歩行の違和感がみられたら、すぐに病院で診てもらいましょう。遺伝的要因の他、肥満や激しい運動による影響が原因で発症しますので、飼い主さんの管理も重要になります。
皮膚病
「皮膚病」は様々な皮膚トラブルを発症し、長引きやすく再発しやすい疾患です。被毛も清潔を保つことや、食事や運動で免疫力を高めることが大切です。日ごろのお手入れやキンシップなどから注意深く確認してあげてくださいね。
エストレラマウンテンドッグの飼い方は?
飼育環境
室内で飼育する際は、広いスペースが必要になります。大型犬なので、のびのびできるくらいでの広さであれば、ストレスを溜めることはないでしょう。
大型犬特有の関節疾患には気を付けたいので、なるべく負担をかけないためにも2階ではなく1階を飼育スペースにしましょう。
滑りやすい床の場合は、マットを敷くなどの対策をしてあげてくださいね。
最低限揃えておくもの
飼育スペース・ケージ
食器類・床材
首輪やリード・おもちゃ
ドッグフードとおやつ
トイレ用品
ケア用品
動物病院
エストレラマウンテンドッグとの生活をより快適なものにするために、「飼育スペース・ケージ」「食器類・床材」「首輪やリード・おもちゃ」「ドッグフードとおやつ」「トイレ用品」「ケア用品」「動物病院」などの生活用品や準備を揃えておきましょう。
飼育スペース・ケージ
快適に過ごせるスペースを確保します。サークルは十分な広さを確保できるもので、犬用のベッドやケージ・クレートを用意しましょう。クレートとは箱状の家のようなものであり、犬にとって寝床となったり安心できるものになります。移動するときにも使え、病院へ連れて行くときや災害による避難の際にも活躍します。
食器類・床材
ご飯を食べる時に必要な食器を用意しましょう。水のみ用のボウルとフードのためのボウルを別々に準備してあげてください。食器類を選ぶ際は「耐久性はあるか」「滑りにくくないか」「大きさは適切か」といったことを目安に探してみてください。床材についてはすべりにくい材質のものを選び、思わぬ転倒を防ぐために用意しておくと良いでしょう。フローリングの床で滑って関節を痛めないよう、すべりづらいカーペットを敷くなどの対策をしてあげてくださいね。
首輪やリード・おもちゃ
散歩や運動をするときのために、首輪やリード・ハーネスを準備しましょう。遊ぶためのおもちゃや知育玩具なども用意しておくと、遊びを通して良好な関係性を築くことができますよ。
ドッグフードとおやつ
健康管理のため、年齢に適した高品質の犬用のドッグフードを用意しましょう。初めて犬を飼育する方は、水と餌だけで栄養が賄える「総合栄養食」と書かれたドッグフードを用意するといいですね。飼育に応じて適切な量を与えるようにしてください。絶対に必要というわけではないですが、おやつも同時に用意しておくといいですね。しつけトレーニングの際に「ご褒美」として利用できますよ。
トイレ用品
屋内で飼育する際は、排泄物を処理するための犬用のトイレトレーを用意します。また、トイレトレーニングのために新聞紙やトレーニングパッドも役立ちますので、一緒に揃えておくといいですね。
ケア用品
健康と衛生を保つために、犬用のシャンプーやブラシ、爪切り、歯磨きセットなどのケア用品を用意します。
動物病院
何かあった際や健康管理のために、かかりつけの動物病院も見つけておくと安心です。獣医師の診察や予防接種、必要な薬やサプリメントなどを考慮し予算を立てておくのもいいですね。
お手入れ
被毛ケア
シャンプー
耳掃除
歯磨き
爪切り
エストレラマウンテンドッグとの生活をする上で、日々のお手入れは大切です。「被毛ケア」「シャンプー」「耳掃除」「歯磨き」「爪切り」などを取り入れて清潔を保つようにしましょう。
被毛ケア
被毛は定期的にブラッシングすることが重要です。毛の絡まりや抜け毛を防ぎ、清潔で健康な被毛を保つことができますよ。被毛の手入れは「ショートコートタイプ」であれば週に1度、「ロングコートタイプ」であれば週に2~3度のブラッシングが必要です。ブラッシングの際は、皮膚の状態も確認するようにしましょう。
シャンプー
適切な犬用シャンプーを使用し、毛並みや肌に合わせた温度のお湯で洗います。シャンプーは月に1回程度を目安に行いましょう。頻度は個体や被毛の状態により異なるため、獣医師のアドバイスを参考にするようにしてください。
耳掃除
エストレラマウンテンドッグのような垂れ耳は通気性が悪く炎症を起こしやすいため、定期的なお手入れが必要です。専用のクリーナーを使って、見える範囲で汚れを取り除くようにしてくださいね。「耳垢が増えた」「耳から悪臭がする」と言った場合はすぐに病院へ。
歯磨き
犬の歯の健康は全体的な健康にも関わるため、定期的な歯磨きが必要になります。犬用の歯ブラシや、歯垢・歯石を取り除いてあげてください。歯ブラシが苦手な方は、歯磨き用のおもちゃやパウダー状の食事に混ぜるケア用品も販売されていますので、ぜひ取り入れてみてくださいね。
爪切り
犬の爪は適度な長さに保つ必要があります。必要に応じて爪切りを使用し、適切な長さに切り揃えましょう。
エストレラマウンテンドッグの散歩やしつけは?
散歩
散歩は毎日1時間程度を2回行いましょう。運動不足はストレスになってしまいますので注意してくださいね。エストレラマウンテンドッグは体重が重く、腰などに負担がかかりやすい犬種です。激しい運動は避けるようにしましょう。
しつけ
やや独立心が強いので子犬の頃からのしつけがポイントです。
飼い主との主従関係を幼犬の頃からしつけ、服従訓練をします。主人以外には警戒心を強く持つため、しつけを怠るとトラブルに発展する場合もあり、また独立心の面から、しつけが中途半端な場合は言うことを聞かず自分勝手な行動をするようになります。散歩時の反射的に動くものを追いかける習性などを抑えこむように、飼い主の静止命令を聞くように普段から厳しくしつけてあげてください。
狩りなどの実用犬向きな犬種なので、しつけはとても大変です。そのため初心者には向かない犬種と言えますよ。
エストレラマウンテンドッグにおすすめのドッグフードは?
総合栄養食と一般食
ドッグフードをメインで与えたい場合は、「総合栄養食」と表示されているドッグフードを選びましょう。これは水と一緒に与えるだけで、健康が維持できるドッグフードのことです。選ぶ際は原材料を必ず確認しましょう。主原料が「肉類」であることが望ましいですよ。
手作り食をメインで与えたい場合は、「一般食」と表示されているドッグフードがおすすめです。いわば「おかず」のようなものであり、トッピングとして利用することで手軽に栄養を追加することができます。
食事量
ドッグフードの裏面に記載されている量をあげるようにします。ただ、体重との換算表は、愛犬が「理想体型」であることを前提としているので、太っている子や痩せている子は量の調整が必要となります。
ごはんを食べない・・・どうすればいい?
ご飯を食べない場合はいくつかの理由があり、主に「好みの味ではない・食べにくい」「体調不良や季節による食欲の低下」「食器や環境が気に入らない」「ストレスが溜まっている」「病気」などが挙げられます。
この場合は、以下の方法を取り入れてみてくださいね。
トッピングをしてみる
まずはドッグフードにササミなどをトッピングして与えてみて、食欲が改善されるかを確認してみてください。新鮮な生肉を原材料に利用しているドッグフードに切り替えるのも手ですよ。
フードを食べやすくする
食べづらさが原因の場合は、飼い主さんがひと手間加えてあげましょう。ドライフードであれば、ぬるま湯でふやかして香りを立たせるのも手です。ニオイで食欲を刺激することができます。
また、粒が大きいようであれば砕いてあげるのもいいでしょう。ウェットタイプとドライタイプを組み合わせれば嗜好性が高まり、また水分も一緒に摂取することができます。
食器や環境を変える
食べやすい食器に変更したり、食事する場所を変えてみるといいかもしれません。ストレスを抱えている場合もあるので、遊びや散歩の時間を増やして発散させるのもいいですね。
動物病院で診てもらう
食べない原因が病気の可能性もあります。食べたくても、食べられないのかもしれません。「好きなおやつも食べない」「ぐったりしている」「元気がない」といった様子が見られるようであれば、かかりつけの動物病院で診てもらいましょう。
日本で飼うにはハードルの高い犬
エストレラマウンテンドッグはペットではなく狩りなどの実用犬として適している犬種です。
一般の方がペットにするにはハードルが高いといえます。どうしても飼ってみたい方は、「ジャパンケネルクラブ」という団体が主催しているドッグショーを見学されることをおすすめします。
日本でエストレラマウンテンドッグは希少ですが、たまに出場していることがあります。飼い主の方に話をよく聞いてみると、飼ったあとの生活や大変なことがわかり、実感がわきますよ。