あまり考えたくないことですが、愛猫とのお別れは必ずやってくるものですよね。そのとき私たちは何をすればよいのでしょうか。
この記事では愛猫の死後に行う対応の方法や、ペットロス症候群についてまとめました。
愛猫との死別の種類
まずは愛猫との死別にはどんなものがあるのかご覧ください。
自然死
安楽死
事故死
自然死
猫の寿命に任せる別れ方が自然死です。一般的な寿命は10~15年になりますが、病気の場合は延命治療をするかしないか選択をせまられることもあります。また自宅で看取るか、病院で看取るかを決断する必要もあります。
よく猫は死ぬ前に姿を消すといった話がありますが、これを信じて外に出た愛猫をほったらかしにして、知らずのうちにどこかで死んでしまうケースがあります。この場合、死んだ愛猫は清掃局が回収してしまうという悲しい最後になりかねません。ほったらかしにせず飼い主さんのもとで看取ってあげてくださいね。
死因が老衰である場合は比較的スムーズに見送ることができますが、死因がはっきりしないときはペットロス悪化の可能性があるため「死後剖検(しごぼうけん)」という選択肢も考慮に入れてください。
死後剖検(しごぼうけん)
あいまいな死因を究明するため、火葬前に遺体を細かく検査することを死後剖検といいます。ただ死因がよくわからないまま費用が10万円近くかかったり、遺体にメスを入れたりといったデメリットもあるので、担当獣医師とよく相談した上で、専門機関に依頼するようにしてください。
安楽死
安楽死は飼い主さんの判断で愛猫の命を絶つ別れ方です。安楽死は経済的、時間的、気力的に猫の介護を続けられない場合や、苦痛を伴う病気にかかったときに早く楽にしてあげたいという思いで選択されるケースが多いです。
法律上ペットは「物」扱いのため安楽死自体は法律に引っかることはありませんが、じっくり考えた上で獣医師との相談のもと行うようにしてください。
事故死
事故によってペットを失う別れ方が事故死で、猫の死に方の中でもっとも悲しいケースといえます。
放し飼いで車に引かれる、車のエンジンに巻き込まれる、ベランダから落下する、コンセントや電気コードで感電するなど、これらの死亡事故のほとんどは回避することができます。そのため飼い主さんが自責の念にかられ、軽いうつ症状に陥ることもあります。
飼い主さんは日頃から事故に巻き込まれないよう対策意識を強くもつことが大切ですね。
愛猫の死後に行う【遺体の安置】
安置する場所を用意
死後硬直に注意する
腐敗を防ぐ
葬儀業者への連絡
葬儀前の最後のお別れ
猫が息を引き取った後は、葬儀を行うまで遺体を一定期間安置する必要があります。安置の仕方をご紹介します。
用意するもの
安置のために必要なもの |
---|
ダンボール、木箱、プラスチックボックスなど |
大き目のビニール袋 |
新聞紙(多めに) |
使い捨てバスタオル |
ペットシート |
ドライアイス・氷・保冷剤 |
安置する場所を用意する
まずは猫の遺体を収める棺を用意します。
①ダンボールや木箱、プラスチックボックスの底に新聞紙やビニール袋を敷きます。
②中にドライアイスや氷、保冷剤などを敷き詰めます。
③さらにその上から新聞紙やペットシート、使い捨てのバスタオルなどを敷きます。これは体液が染み出してしまっても棺を汚さないためです。
④棺は直射日光の当たらない涼しい場所に安置します。安置場所がない場合は、ペット霊園に相談すると一時的に預かってもらこともできます。
死後硬直に気をつける
気温や室温によっても変わりますが、死後2〜3時間ほど経つと死後硬直と呼ばれる筋肉の硬化がはじまります。もし手足が伸びたまま硬直してしまうと、棺の中に納まりきらなくなるので要注意です。
①濡れタオルで体を拭き、毛並みを整えます。
②まぶたを閉じて、手足を胸の方に折り曲げます。
③タオルなどで体をくるみ、用意した棺に入れます。
遺体の腐敗を防ぐ
血流が止まった体は免疫力がないため、数時間~数十時間で微生物が繁殖し腐敗が進んでしまいます。以下の手順で腐敗を遅らせるようにしてください。
①室温を低めに設定します。
②氷やドライアイスなどを猫の腹部に当ててタオルで固定します。温度が低い環境では微生物が繁殖しにくくなりますが、この方法でも48時間程度が限界とお考えください。
安置できる期間
冬の寒い時期であれば2~3日、夏場ですと保冷剤で遺体を冷やして2日くらいが限度となります。
葬儀業者へ連絡する
愛猫とお別れした直後は、パニックになってしまい何をすればいいのか不安になってしまいます。そのようなときは「ペット葬儀110番(日本全国24時間365日受付)」などのペット葬儀業者に連絡をするのがおすすめです。1から葬儀について教えてくれます。
最後の別れやお通夜をする
最後のお別れをする前に一緒に火葬・埋葬する思い出の品などを決めておきます。火葬の場合は金属製品やプラスチックは入れられないので注意してください。
葬儀を行うまでは線香をたいたり、ローソクを立てたり、遺影を飾ったり愛猫との最後の時間を過ごします。「お通夜」でペット仲間を招き、お別れをするのもいいですね。
愛猫の死後に行う【葬儀】
地方自治体での引き取り
火葬
土葬
葬儀の仕方にはいくつか方法があります。
地方自治体の引き取り
地方自治体で猫の遺体を引き取ってくれます。ただし自治体によっては「有料ごみ」の分類で処理(他のごみと一緒に焼却処分)されることもあります。 料金等の詳細はお住いの地方自治体に問い合わせてください。
火葬
猫の遺体を焼却してくれる火葬施設があります。地方自治体によっては、ペットの火葬施設を備えているので、料金や施設の詳細はお住いの市区町村役場に問い合わせてみてください。
公共機関以外の民間のペット火葬業者の場合は、火葬パターンが以下のように分類されます。
合同葬
他のペットと一緒に読経等の合同葬儀をしたあと、火葬してもらいます。葬儀や火葬の立会い、お骨上げ(二人一組で足の骨から順番に骨壷に入れ、最後に第二頚椎(だいにけいつい)を入れて成仏を願う儀式)はできません。
遺骨は共同墓地や合同供養塔に納骨・埋葬されます。火葬施設へは自分で行くこともできますし、遺体を業者に預けることも可能です。
一任個別葬(いちにんこべつそう)
読経等の葬儀のあと、個別に一体ずつ火葬してもらい全ての業務を葬儀社に一任することを一任個別葬といいます。
一任個別葬は、火葬の立会いやお骨上げはできません。遺骨は納骨・埋葬するか、返骨(骨壷に入れた愛猫の遺骨を自宅へ戻してもらうこと)するかを選べます。
立会い個別葬(たちあいこべつそう)
読経等の葬儀のあと、飼い主さん立会いのもと個別に一体ずつ火葬しお骨上げをするのが立会い個別葬儀です。納骨・埋葬、返骨ができます。
自宅葬
葬儀業者が自宅まで出向いて全ての業務を執り行う葬儀です。愛猫と関わりの深かった人を招き、人間と同じように葬式を行うことができます。
読経等の葬儀のあと、移動火葬炉(火葬車)にて火葬します。お骨上げもできます。
ペット火葬業者を選ぶポイント
ペット火葬業者を選ぶ際にチェックしたいのは「火葬への立会い」「お骨上げ」「返骨」の3つが可能かどうかです。
火葬形態 | 火葬の立ち合い | お骨上げ | 返骨 | |
---|---|---|---|---|
合同葬 | 合同火葬 | × | × | × |
一任個別葬 | 個別火葬 | × | × | ◯ |
立会い個別葬 | 個別火葬 | ◯ | ◯ | ◯ |
自宅葬 | 個別火葬 | ◯ | ◯ | ◯ |
悪質なペット火葬業者に注意
なかには悪質なペット火葬業者もいるので、選ぶ際は注意が必要です。
料金体系があいまいで火葬中に追加料金を請求してきたり、支払わなければ火葬を中断して遺骸を返却するといった脅しをかけてきたりする業者、また遺体を地方自治体に丸投げしゴミとして処理したり、遺骨を不法投棄する業者も実際に存在します。
業者を選定する際は、複数社の見積もりを取ること、オプション料金の有無を事前に確認し料金総額は必ず書面で残すことなどを徹底するようにしてください。
土葬
土葬は遺体を土中に埋めることですが、一般的には自宅の庭に埋葬します。公園など公共の場に埋葬することは犯罪になります。
火葬していない遺体を埋葬するときは、1メートル以上の深い穴を掘るようにしてください。浅いとカラスなどに墓を荒らされ、悪臭によってご近所の迷惑になってしまいます。
ちなみに、日本の法律ではペットの遺体は「一般廃棄物」の扱いとなっており、人間の遺骨や遺体に適用の法律は無関係です。
適切に焼却し、不衛生にならないよう自宅の敷地内に埋めることは法律上問題はありませんが、公有地や他人の土地に埋葬すると、廃棄物の不法投棄となり罰せられます。なお、海に投棄することも禁止されています。
愛猫の死後に行う【埋葬】
合同埋葬
納骨堂への納骨
ペット霊園への納骨
自然納骨
自宅埋葬
手元供養
埋葬とは、火葬したあと四十九日や命日、愛猫の誕生日などに遺骨をしかるべき場所に安置することです。一般的な埋葬の種類をご紹介します。
合同埋葬
合同葬で火葬した遺骨を、他の遺骨と一緒に共同埋葬施設に安置します。合同のお墓にはペットの名前が書かれた塔婆(そとば:お墓の後ろに立てる塔の形をした縦長の木片で、供養のために経文や題目などが書かれている)が立ちます。定期的に「合同慰霊祭」などもありますよ。
納骨堂への納骨
納骨堂はペット霊園などに併設されており、骨壷を効率的に安置することができます。コインロッカータイプ、棚タイプ、個室タイプなどがあり、他のペットと合同で納骨するか、個別に納骨するかを選べます。一般的には個別葬で弔われたペットの骨壷が入ります。
契約は1年単位で更新するもの、永代供養してもらうものなどがあります。
ペット霊園への埋葬
一般墓地のペット専用区画や、ペット専用墓地などに遺骨を安置します。一般的には、個別葬で弔われたペットが入ります。
自然散骨
自然散骨(しぜんさんこつ)は、遺骨を自然環境にまくことです。海に散骨することを「海洋葬」、 山に散骨することを「山葬」 、木の苗とともに墓地内に埋めることを「樹木葬」と呼びます。
飼い主さんが自分で行うこともできますが、骨の粉末化から散骨までを代行してくれる業者もいます。一般的に遺骨を自然環境にまく行為は、常識の範囲内であれば法に抵触することはなく合法です。特別な埋葬許可証も必要ありませんよ。
”常識の範囲内”のケース
他人の私有地や農耕地、養殖地などに散骨しないようにします。自分の土地に散骨する場合も、近隣住民に迷惑がかからないよう注意してくださいね。
散骨するときは砂粒より小さく砕き「骨」とわからないようにしたり、喪服を着たりお供え物をしたりしないことも大切です。
自然散骨については各自治体で特別な条例等を設けている場合もあるので、事前に確認するようにしてくださいね。
自宅埋葬
自宅の庭などに遺骨を埋めることを自宅埋葬といい、ペットが身近にいるような安心感があります。最近は集合住宅の室内やベランダなどで、プランター(植木鉢)に遺骨を埋葬し安置する人もいます。
手元供養
納骨や埋葬をせずに遺骨を自宅で保管し供養することを、手元供養、また自宅供養と呼びます。
納骨型供養
手元供養に分類される納骨型供養には、自宅のインテリアを損なわないオブジェに遺骨を納める「納骨オブジェ」や、遺骨(遺灰)の一部を細かく砕いたものをペンダントに収納した「メモリアルジュエリー」などがあります。
愛猫を見送った後のペットロス症候群
愛猫とのお別れを経験したあとは、多くの飼い主さんが虚無感や脱力感に襲われます。症状の有無や重度はさまざまですが、生活に支障をきたすレベルになるのはペットロス症候群と呼ばれます。
愛猫を失った悲しみには、いくつかの典型的なモデルがあります。
悲嘆のプロセス3段階
初期段階:ショックや拒否
中期段階:情緒的な苦痛や苦悩
最終段階:回復
悲しみの5段階
大事な愛猫をなくしたときに生じる悲しみ〜回復までには「拒否・怒り・交渉・抑うつ・受容」の5つのプロセスに分類されます。
このようなプロセスを事前に知っているだけで、ペットロス症候群からの立ち直りが早まる可能性があります。
拒否 | 愛猫が死んだ事実を認めない心理プロセス。 |
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怒り | 自分に苦しみを与えたものに漠然と反発するプロセス。担当の獣医さんや自分自身などが対象になります。 |
交渉 | 悲しみを克服するため神的なものに願掛けするプロセス。 |
抑うつ | 無気力になるプロセス。悲しみの感情があまりにも強くなり、今まで楽しかったことや夢中だったことがどうでよくなります。 |
受容 | 死を事実として受け入れポジティブな感情を取り戻していくプロセス。 |
悲しみは通常であれば時間が解決してくれるものですが、苦しみや後悔を克服できずに長期間に渡って軽いうつ状態になることもあります。以下の対策や解決策を参考にしてください。
ペットロスの対策や解決策
不慮の死を回避する
寿命ではなく不慮の事故の場合、飼い主さんは自責の念にかられます。日頃から安全に配慮した生活習慣を心がけ、愛猫の体や動作を観察することで病気の兆候を早く見つけるようにしてくださいね。
依存しすぎないようにする
愛猫への依存度が強いとペットロスの危険度が高まります。過度に依存しないよう自分自身の趣味や関心の幅を広げたり、もう1頭別のペットを迎えたりという方法がおすすめです。
死の瞬間に立ち会う
死に目に会えないという場合も自責の念からペットロスになりがちです。死の瞬間にはなるべく立ち会うようにして、死後はすぐに火葬せず棺に安置して「お別れ会」を行うのもおすすめですよ。
思い切り泣く
悲しみの感情を抑圧するのはペットロスをこじらせる原因になります。泣く行為は排泄プロセスでもあり「泣いたあとは気分がよくなる」という研究成果もあるので、思い切り泣いてくださいね。
ペットに手紙を書く
漠然とした悲しみはペットロスを長引かせることになります。愛猫への感謝の気持ちや謝罪や反省、楽しかった思い出などを書き出してみると、漠然としていた気持ちが整理されすっきりすることもあります。
愛猫の死という現実を受け入れるのにもおすすめですよ。
ルーティンを変える
愛猫と暮らしていたときの行動パターンは、楽しかった思い出を想起することになりペットロスを長引かせます。愛猫との思い出の品などは落ち着くまで見えない場所にしまい、日常生活の行動パターンを少しずつ変えるようにしてください。
経験者と対話をする
誰かの心ない一言は傷口を広げてしまいます。自分と同じペットを失ったことのある飼い主さんとの会話は有意義なのでフォーラムや集会に参加してみるのもおすすめです。ペットロスの経験談を綴った書籍なども有効ですよ。
いつか必ずやってくる日のために
愛猫が元気なうちは「死後」のことに目を向ける飼い主さんはほとんどいないと思います。
ただ、お別れはいつか必ずやってくるもの。死んだときの対処法を知っておけば、現実を受け止め冷静に行動することができます。
今愛情をたっぷり注いであげることも大切ですが「いつか」のときも、愛情を込めて最後まで見送ってあげられるようにしたいですね。