愛猫に対して飼い主が考えなければならないことのひとつに、去勢・避妊手術ががあります。きちんと育てられる貰い手のいない子猫をむやみに増やさぬように、選択は必要ですよね。
この記事では、猫の去勢について、性格の変化や、発情、肥満など、去勢後の注意点についてまとめました。
目次
猫の去勢手術とは?メリットは?
オス猫の生殖器を切除する手術のこと
オス猫の去勢手術と、メス猫の避妊手術を併せて不妊手術と呼びます。様々な事情で、子猫が生まれても飼うことができない場合、思わぬ妊娠を避けるために手術を行うことが一般的です。
諸説ありますが、オスメスともに生後6ヶ月前後で手術を受けることが推奨されています。
望まぬ妊娠を避けられる
ストレス軽減・解消
特定の病気の対策
長生きする
オス猫が去勢手術を行うメリットは、「望まぬ妊娠を避けられる」「さかりの時期の鎮静・ストレス軽減」「特定の病気の対策になる」「長生きする」などがあります。
猫の去勢、しないとどうなる?
去勢手術は先ほど記したように、様々なメリットがあります。その中でも「望まぬ妊娠を避けられる」というのは大きなメリットです。
猫は多いときで1度に5匹ほど赤ちゃんを産みます。飼い主さんがそれをちゃんと知らずに、たくさんの赤ちゃんが産まれた結果、お世話をすることができずに行政に引き渡される子猫もたくさんいます。
2015年に殺処分されてしまった猫のうち、およそ半分が子猫でした。
もし飼い主さんが産まれてくる子猫のお世話ができないのであれば「望まぬ妊娠を避けられる」去勢手術を検討してみてくださいね。
猫の去勢手術、費用は?
猫の去勢手術は保険が適用されず、全て実費となります。
平均的にオスは約10,000円、メスは約15,000円かかります。高齢の猫や病気の猫は血液検査をすることがあり、その場合はさらに約5,000円かかります。
助成金
自治体によっては、猫の去勢手術に補助制度が設けられており、去勢手術の費用を負担するための助成金がもらえます。
ただ、条件や金額は自治体によってかなり幅があります。各自治体はホームページやパンフレットにて補助制度の紹介を行っているので、チェックしてみてくださいね。
猫の去勢手術の時期はいつがいい?
生後5ヶ月齢
オス猫が生後9~12ヶ月ごろに性的に成熟することを元に、国際猫医療協会(ISFM)では性成熟が始まる前の生後6ヶ月以内での去勢手術を推奨しています。
2016年に開かれた有識者会議では、正式な去勢手術適齢期として生後5ヶ月齢が採用されていますよ。
ただ、去勢に適した時期については様々な意見があるため、獣医師と相談して決めることが大切です。
猫の去勢手術の手順や期間は?
10分程度
去勢手術は、肛門付近にある睾丸を取り除けば終了です。皮膚に小さな切れ込みを入れて睾丸を摘出します。
期間は病院によっても異なりますが、手術当日は入院をして、翌日の経過が良好であれば退院となる場合が多いですね。その後、1週間後に病院で抜糸や経過観察を行い、問題がなければ終了です。
猫の去勢手術、注意点は?
手術前
全身麻酔をかけると全身の力が抜けるために、胃の内容物を吐いてしまうことがあります。
動物病院の方針も異なるため一概には言えませんが、手術前12~18時間程度の絶食をしなければなりません。
手術後
麻酔後は消化管機能が正常に戻るまで時間がかかるため、食べた物を吐いてしまうことも多いです。そのため、術後半日程度は絶食の必要があります。
そのほか、激しい運動によって傷口が開いたり、舐め過ぎによって術創がただれてしまった場合も、早急に動物病院を受診するようにしてくださいね。
愛玩動物看護師 渡邉鈴子さん
術後数日はエリザベスカラーを装着しましょう。嫌がる猫も多いかもしれませんが、術部を守るために獣医さんからの指示があるまでは装着をしてくださいね。エリザベスカラーを装着するとご飯が食べにくくなります。お皿に高さを付けることで食べやすくなるのでそういった工夫もしてみてくださいね。
猫は去勢後、性格の変化は?
甘えたがる
攻撃性が和らぐ
オス猫は去勢手術をすると、大人に変化していくための「成長ホルモン」が分泌されなくなります。性格は成長ホルモンに依存して形成されるので、去勢をすると子猫のときの性格が引き継がれることが多いです。
特に1歳を迎えるまえに去勢手術を受けた場合は、飼い主を親だと思って甘えたがる性格が強まりますよ。
また男性ホルモンの分泌量が減るため、中性的な性格になるともいわれています。オス猫は攻撃性が和らぎ、人間との共同生活における問題行動が目立たなくなりますよ。
性格の変化が大きく出ると、「本当に自分の飼い猫か」と驚いてしまうかもしれませんが、愛猫が自分を頼りにしてくれるようになると、嬉しいですよね。
オス猫の去勢後、発情する?
発情期前の去勢なら、発情はしない
発情期後の去勢なら、発情の回数が減る
去勢手術を受けたオス猫は発情しなくなります。生殖にかかわるストレスから解放され、性的な欲求不満からくるストレスを感じなくなります。
そのため、発情期に起こる「マーキング」「叫び声」「他の猫への攻撃」などの問題行動がみられなくなります。
「発情期を経験したあと」のオス猫が去勢手術を受けた場合は、手術後もこのような行動をみせることがあります。ただ、生殖機能は失われているため、去勢手術を受ける前に比べて少なくなりますよ。
猫の生殖器の病気は、発見が遅れやすく命に関わるケースも多いですが、去勢手術で生殖器が除かれたあとはその心配もなくなりますよ。
去勢後は心身ともに穏やかに過ごせるため、長生きする傾向にあります。
猫は去勢後、肥満になりやすい
猫に去勢手術後に気をつけたいのは肥満です。術後のオス猫はホルモンバランスが崩れて、体重維持に必要な消費カロリーが減っています。
手術前に比べて太りやすくなっているといえますので、同じ量の食事を与えるとすぐに太ってしまいますよ。
オス猫は発情すると、とにかく走り回って性欲を発散させることがあり、ある程度の運動量が確保されている状態にあります。
去勢手術で生殖機能にかかわるストレスがなくなることで運動量が減るので、術前と同じ量の餌をあげ続けるだけで肥満になってしまうのです。
太った猫もかわいらしいですが、肥満は「糖尿病」や「関節の疾患」など生活習慣病につながります。
去勢手術を受けた後は愛猫が肥満にならないよう、「低カロリーのキャットフードに切り替える」「一緒に遊ぶ時間を増やして運動させる」など、意識してあげてください。
猫の去勢手術後、おすすめのキャットフードは?
愛猫の肥満を解決しようとした場合「フードを与える量を減らす」飼い主さんが多いです。確かに体重は落ちますが、栄養不足に陥りかえって不健康になってしまうケースもあります。
太りやすい原材料の含有を抑えてあるが、栄養バランスは整った食事に変更してあげることが1番おすすめです。
猫の去勢、手術直後の注意点?
警戒心からトイレの場所を守らなくなる
去勢手術を受けた直後の猫は、排泄にまつわるトラブルを起こすことがあります。デリケートな性格の猫が手術でストレスを感じた場合、一時的な警戒心からトイレ以外の場所に排泄をしてしまうためです。
猫はきれい好きなので「においが付いているところ」に排泄する習性があります。トイレ以外の場所で排泄した場合、においを完全に消してあげないと、新しくトイレの場所として認識してしまうこともありますよ。
排泄物は早いうちに片付けて、においを残さないようにしてくださいね。また、手術後に動物病院に数日以上泊まっていた場合は、家でのトイレの方法を忘れてしまっているケースもあります。
時間が少しかかりますが、一から根気よく覚えなおさせてください。
手術後3日ほどは排泄物の量や回数が少なくなりがちですが、手術前に食事や水を控えていたために起こることなので、心配は必要ありませんよ。
去勢手術はメリットが大きいが、デメリットもある
去勢手術には、メリットもデメリットもあります。大きなメリットがあっても、可愛い愛猫が全身麻酔で手術をするのですから、リスクも当然あります。
日々愛情を注いでいるからこそ、飼い主にとっては悩む選択かと思います。猫の去勢・避妊手術には様々な考え方がありますが、家族のライフスタイルを踏まえて、じっくり時間をかけて考えてあげてくださいね。
長い目でみて、飼い主も愛猫も双方が幸せになれるような決断をしてください。