オーストラリアンケルピーはオーストラリア原産の牧羊犬です。並はずれた運動能力や野性味を残した性格や凛々しい表情が魅力的で、オーストラリアでは今でも牧羊犬やショードッグ、家庭犬として愛されています。
この記事では、オーストラリアンケルピーの性格、体重や被毛の特徴、寿命や病気、飼い方、しつけや歴史についてまとめました。
目次
オーストラリアンケルピーの基本情報は?
歴史
19世紀に入植者達がオーストラリア独自の牧羊犬として品種改良したのがオーストラリアンケルピーです。スコットランド人が持ち込んだ牧羊犬に、ディンゴやボーダーコリーを交配させたという説が有力です。「ケルピー」という名はスコットランドに伝わる水の精の名前にちなんでいます。
出典:JKC「オーストラリアン・ケルピー」、若山正之監修「まるごとわかる犬種大図鑑」
特徴
体高 43~51cm
体重 11~20kg
被毛 ダブルコート
被毛カラー ブラック、ブラック&タン、他多様
見た目の特徴
体高43~51cm、体重11~20kgで中型犬に分類される犬種です。しなやかで引き締まった体でスムースコリーとディンゴを足して2で割ったような容姿です。オーストラリアンケルピーはドックショー出場を目的とした「ショーケルピー」と作業犬として働くことを目的とした「ワーキングケルピー」に分けられます。どちらも三角形の耳と、短い被毛という共通点があります。
被毛の特徴
被毛は「スムース」「ショート」「ラフ」の3種があり、カラーはさまざまなバリエーションがあります。例えばショーケルピーは短いダブルコートで、ブラック、ブラック&タン、レッド、レッド&タン、フォーン、チョコレート、スモークブルーなどの毛色があります。
オーストラリアンケルピーの性格は?
性格
陽気
活発
賢い
警戒心が強い
タフで活動的
オーストラリアンケルピーは、判断力と服従心に富み、牧羊犬らしい活発さと敏捷さをもち合わせています。仕事をこなすことが好きなので、飼い主やその家族に与えられると喜んで取り組みます。活発で陽気な性格なので、遊ぶことも大好き。散歩以外の運動をしっかり与えることができる人に向いている犬種です。
友好的だがやや警戒心強め
オーストラリアンケルピーは、他の犬や人間とは争うことをせず友好的に関わろうとしますが、家族や仲間と認めた相手以外には一定の距離を置く一面も見られます。普段は大人しく吠えることは少ないですが、見知らぬ人には警戒心をあらわにして吠えることがあるため、番犬に向いている犬種とも言えます。しつけで吠え癖をやめさせることはできますので、気になる場合はしっかりトレーニングを取り入れる必要があります。
オーストラリアンケルピーの寿命や病気は?
寿命
12年前後
オーストラリアンケルピーの平均寿命は12年前後です。中型犬としては平均的です。食事や運動管理によっては、もっと長い時間をともに過ごすことができますよ。
病気
進行性網膜萎縮
股関節形成不全
拡張型心筋症
小脳変性症
オーストラリアンケルピーが気をつけるべき病気として「進行性網膜萎縮」「股関節形成不全」「拡張型心筋症」「小脳変性症」などがあります。
進行性網膜萎縮症
「進行性網膜萎縮」は親からの遺伝性疾患であり、物や形を認識するために必要な膜が薄くなることで失明へ至る目の病気です。初期症状は暗い環境での視力低下が見られます。「暗闇を怖がるようになった」「暗闇だと反応が遅くなった」といった様子が見られる場合はすぐに病院へ行きましょう。長い時間をかけてゆっくりと進行していくため、日々の様子に変化がないか注意してください。
愛玩動物看護師 渡邉鈴子さん
もし進行性網膜萎縮症になってしまったら、視界が悪くなるため、家の模様替えを控えるようにしましょう。また、ぶつかったら危ない角にはガードを付けるなど二次的な怪我の防止に努めましょう。
股関節形成不全
股関節の骨の形が変形してしまう関節の病気です。変形した箇所が嚙み合わず炎症を起こし、痛みで動くのを嫌がるようになります。原因の一部には肥満があるので、発症させないためにも運動と食事管理は欠かせません。歩様に異常が見られた場合は注意が必要で、「股関節形成不全」の他に「小脳変性症」の可能性も考えられます。早めに病院へ行き診察してもらってくださいね。
愛玩動物看護師 渡邉鈴子さん
股関節形成不全では、うさぎ跳びのような歩き方やモンローウォークと呼ばれる腰を左右に振る歩き方をします。このような歩き方をしていたら動物病院を受診しましょう。
拡張型心筋症
「拡張型心筋症」は時折失神をして死に至ることもある病気です。原因が不明で対策法がありませんので、失神をしたらすぐに病院へ行ってくださいね。また、定期的に動物病院を受診しましょう。
小脳変性症
運動機能を司る小脳がうまく機能しなくなる先天疾患です。「バランスがうまく保てない」「歩行にバラつきが見られる」といった症状が見られます。入手前に遺伝子検査をしておくことをおすすめします。
オーストラリアンケルピーの飼い方は?
飼育環境
オーストラリアンケルピーを飼育する際は、十分な運動を確保でき、自由に走り回れる広さがあると良いでしょう。家の中に閉じ込めるような飼い方はおすすめできません。室内飼育の場合は、運動不足でストレスを溜めないように注意してくださいね。
飼育するために準備しておくもの
飼育スペース・ケージ
食器類・床材
首輪やリード・おもちゃ
ドッグフードとおやつ
トイレ用品
ケア用品
動物病院
オーストラリアンケルピーとの生活をより快適なものにするために、「飼育スペース・ケージ」「食器類・床材」「首輪やリード・おもちゃ」「ドッグフードとおやつ」「トイレ用品」「ケア用品」「動物病院」などの生活用品や準備を揃えておきましょう。
飼育スペース・ケージ
快適に過ごせるスペースを確保します。サークルは十分な広さを確保できるもので、犬用のベッドやケージ・クレートを用意しましょう。クレートとは箱状の家のようなものであり、犬にとって寝床となったり安心できるものになります。移動するときにも使え、病院へ連れて行くときや災害による避難の際にも活躍します。
愛玩動物看護師 渡邉鈴子さん
クレートは普段から慣れさせておくことで、スムーズに動物病院へ連れていくことが可能です。クレートを動物病院へ行くときにしか使用していないと、クレート=動物病院という認識になってしまいます。普段から使用することで防ぐことが可能です。
食器類・床材
ご飯を食べる時に必要な食器を用意しましょう。水のみ用のボウルとフードのためのボウルを別々に準備してあげてください。食器類を選ぶ際は「耐久性はあるか」「滑りにくくないか」「大きさは適切か」といったことを目安に探してみてください。床材についてはすべりにくい材質のものを選び、思わぬ転倒を防ぐために用意しておくと良いでしょう。フローリングの床で滑って関節を痛めないよう、すべりづらいカーペットを敷くなどの対策をしてあげてくださいね。
首輪やリード・おもちゃ
散歩や運動をするときのために、首輪やリード・ハーネスを準備しましょう。遊ぶためのおもちゃや知育玩具なども用意しておくと、遊びを通して良好な関係性を築くことができますよ。
ドッグフードとおやつ
健康管理のため、年齢に適した高品質の犬用のドッグフードを用意しましょう。初めて犬を飼育する方は、水と餌だけで栄養が賄える「総合栄養食」と書かれたドッグフードを用意するといいですね。飼育に応じて適切な量を与えるようにしてください。絶対に必要というわけではないですが、おやつも同時に用意しておくといいですね。しつけトレーニングの際に「ご褒美」として利用できますよ。
トイレ用品
屋内で飼育する際は、排泄物を処理するための犬用のトイレトレーを用意します。また、トイレトレーニングのために新聞紙やトレーニングパッドも役立ちますので、一緒に揃えておくといいですね。
ケア用品
健康と衛生を保つために、犬用のシャンプーやブラシ、爪切り、歯磨きセットなどのケア用品を用意します。
動物病院
何かあった際や健康管理のために、かかりつけの動物病院も見つけておくと安心です。獣医師の診察や予防接種、必要な薬やサプリメントなどを考慮し予算を立てておくのもいいですね。
お手入れ
被毛ケア
シャンプー
耳掃除
歯磨き
爪切り
オーストラリアンケルピーとの生活をする上で、日々のお手入れは大切です。「被毛ケア」「シャンプー」「耳掃除」「歯磨き」「爪切り」などを取り入れて清潔を保つようにしましょう。
被毛ケア
オーストラリアンケルピーは短い被毛なので、手入れのブラッシングは週に1度程度で良いでしょう。散歩等で汚れたら濡れタオルで拭いてあげます。換毛期は下毛が多く抜けますので、こまめにブラッシングしてあげてくださいね。
シャンプー
適切な犬用シャンプーを使用し、毛並みや肌に合わせた温度のお湯で洗います。シャンプーは月に1回を目安に行いましょう。頻度は個体や被毛の状態により異なるため、獣医師のアドバイスを参考にするようにしてください。
耳掃除
耳は定期的にチェックしましょう。見える範囲でいいので耳専用のクリーナーを使用して掃除をしてあげてください。「耳垢が増えた」「悪臭がする」といった普段と違う様子の場合は病院で見てもらいましょう。
歯磨き
犬の歯の健康は全体的な健康にも関わるため、定期的な歯磨きが必要になります。犬用の歯ブラシや、歯垢・歯石を取り除いてあげてください。歯ブラシが苦手な方は、歯磨き用のおもちゃやパウダー状の食事に混ぜるケア用品も販売されていますので、ぜひ取り入れてみてくださいね。
爪切り
犬の爪は適度な長さに保つ必要があります。必要に応じて爪切りを使用し、適切な長さに切り揃えましょう。
愛玩動物看護師 渡邉鈴子さん
日々のお手入れが自宅で行うのが難しい場合は動物病院やトリミングサロンなどにお任せすることも視野にいれるといいでしょう。
オーストラリアンケルピーの散歩・運動やしつけは?
散歩・運動
オーストラリアンケルピーは活発に運動しますので「ショーケルピー」であっても運動量が必要です。1日2回1~2時間のランニングを交ぜた散歩がおすすめです。運動不足のストレスからノイローゼになる個体も報告されていますので、しっかり取り入れるようにしましょう。
可能な限りドッグランなどで自由運動をさせてあげてください。フライングディスクやアジリティなどあらゆるスポーツにも向いています。他の犬種に比べても脚が速く、好奇心からどんどん遠くへ走ってしまうため、絶対にオフリードをしなようにしましょう。
しつけ
オーストラリアンケルピーは飼い主に対する服従心が極めて強く、物覚えも早いためしつけは難しくありません。
幼犬の頃から飼い主との主従関係を教えることができれば良い関係性を築くことができますよ。家族に対する仲間意識が強く、リーダーと認めた相手の要求を汲み取ろうと向き合う性格をしています。飼い主をリーダーと認めさせることがしつけのゴールといえます。
ご褒美を取り入れる
しつけを行う際は、褒める以外にご褒美を与えてみてもいいでしょう。おやつやおもちゃを与える他、思いっきり遊んであげることもご褒美になりますよ。1番喜ぶことを選んでみてくださいね。
オーストラリアンケルピーにおすすめのドッグフードは?
総合栄養食と一般食
ドッグフードをメインで与えたい場合は、「総合栄養食」と表示されているドッグフードを選びましょう。これは水と一緒に与えるだけで、健康が維持できるドッグフードのことです。選ぶ際は原材料を必ず確認しましょう。主原料が「肉類」であることが望ましいですよ。
手作り食をメインで与えたい場合は、「一般食」と表示されているドッグフードがおすすめです。いわば「おかず」のようなものであり、トッピングとして利用することで手軽に栄養を追加することができます。
食事量
ドッグフードの裏面に記載されている量をあげるようにします。ただ、体重との換算表は、愛犬が「理想体型」であることを前提としているので、太っている子や痩せている子は量の調整が必要となります。
ごはんを食べない・・・どうすればいい?
ご飯を食べない場合はいくつかの理由があり、主に「好みの味ではない・食べにくい」「体調不良や季節による食欲の低下」「食器や環境が気に入らない」「ストレスが溜まっている」「病気」などが挙げられます。
この場合は、以下の方法を取り入れてみてくださいね。
トッピングをしてみる
まずはドッグフードにササミなどをトッピングして与えてみて、食欲が改善されるかを確認してみてください。新鮮な生肉を原材料に利用しているドッグフードに切り替えるのも手ですよ。
フードを食べやすくする
食べづらさが原因の場合は、飼い主さんがひと手間加えてあげましょう。ドライフードであれば、ぬるま湯でふやかして香りを立たせるのも手です。ニオイで食欲を刺激することができます。
また、粒が大きいようであれば砕いてあげるのもいいでしょう。ウェットタイプとドライタイプを組み合わせれば嗜好性が高まり、また水分も一緒に摂取することができます。
食器や環境を変える
食べやすい食器に変更したり、食事する場所を変えてみるといいかもしれません。ストレスを抱えている場合もあるので、遊びや散歩の時間を増やして発散させるのもいいですね。
動物病院で診てもらう
食べない原因が病気の可能性もあります。口内炎などの痛みを伴う場合、食べたくても、食べられないのかもしれません。「好きなおやつも食べない」「ぐったりしている」「元気がない」といった様子が見られるようであれば、かかりつけの動物病院で診てもらいましょう。
オーストラリアンケルピーの迎え入れ方法は?
日本では「ケルケルネット」という愛好家が集まるホームページやインスタグラムがあります。
2023年時点でのジャパンケネルクラブの犬籍では国内で、9頭登録されています。少ないですが専門のブリーダーも北海道から近畿地方にかけて点在していますので、入手も難しくない犬種と言えます。
ペットショップでは見かけることが少ない犬種なので、「ブリーダー」「里親制度」の利用をオススメします。
ドッグスポーツを楽しみたい方向けの犬種
いかがでしたでしょうか?
オーストラリアンケルピーはオーストラリアでは人気があるものの、日本ではあまりみかけない犬種です。抜群の体能力をもっているので、ドッグスポーツを楽しみたいという方にもおすすめな犬種です。
飼育を決めた際は、アクティブなオーストラリアンケルピーと活動的な毎日を過ごしてくださいね。