愛猫が肥満かどうかの測定法、原因、ダイエット方法

肥満猫
愛玩動物看護師
監修者:渡邉鈴子

栃木県生まれ。帝京科学大学にて4年間、動物看護学をはじめとした動物関連の科目を学び、2023年5月には愛玩動物看護師免許を取得。これまでにうさぎや猫の飼育経験あり。2024年にはペット栄養管理士の資格も取得。

猫も人間と同様、食べ過ぎると肥満になります。高齢猫や普段室内で飼われていて運動量の少ない愛猫、避妊、去勢手術後の愛猫は特に注意が必要です。

肥満は体に良くないので、もし愛猫が肥満であれば対応してあげたいですよね。猫の肥満度は猫種や個体によってもちろん違いますが、その判断はどのようにすれば良いでしょうか。

この記事では、愛猫が肥満かどうかの測定法、肥満の原因、ダイエット方法などをまとめました。

 

肥満の猫と平均体重のライン

肥満猫

猫の健康的な体重は、もちろん猫種や個体によって異なります。ですが、一般的には約3〜5kg程度が平均体重といわれています。

もともと大きく成長する猫種は7〜8kgの体重であっても肥満とは一概にいえません。また、小柄な猫種であれば、体重が3kg以下でも健康な場合もあります。

猫の理想体重は、「生まれてから1年経った時の体重」
その体重より1.2倍の体重になったら肥満

といわれる基準もあります。

子猫の頃から猫を飼っているならば、今後の体重管理のためにも、1歳の時点での体重をメモに残しておくことをおすすめします。

1歳を超えている猫を飼っていて、1歳の時の愛猫の体重がわからない場合は、受診をしている動物病院に診察の際に測定した体重の記録が残っていることもあるので、一度聞いてみると良いでしょう。

もし1歳の時の体重より120%を超えていたら、その原因を探り対処することが、愛猫の健康維持のために重要となります。

 

肥満かどうかの測定方法

肥満猫

測定方法

ボディコンディションスコア(BCS)

BCS1 やせすぎ
BCS2 体重不足
BCS3 理想体重
BCS4 体重過剰
BCS5 肥満

ボディコンディションスコア(BCS)は、猫が肥満であるかを判断するために使われる、5段階の指標です。基本的には、猫の見た目と脂肪の付き具合で判断します。

BCSは、多くの獣医師が肥満であるか痩せ過ぎであるかの判定に使っている指標でもあり、飼い主さんでも自分の飼っている愛猫が肥満かどうかを、ある程度判断をすることができます。

 

BCS測定のコツ

測定にはどうしても主観が入ってしまいますが、ニュアンスは以下の通りです。

●肋骨

なんとなく骨が触れる→BCS4
肋骨がどこにあるかわからない→BCS5

●くびれ(立った状態で真上から見るとわかりやすい)

※座っていると丸く見えてしまいます。

・どこがくびれか、かろうじてわかる→BCS3
・くびれが膨らんでいる気がする→BCS4
・くびれるべき部分が明らかに膨らんでいる→BCS5

●お腹(立った時のたるみ具合を、横からのお腹のラインで確認する)

※お腹の皮膚は、一度肥満で伸びてしまうと、ダイエットをしても戻りません。

・お腹のラインが地面と平行→BCS3
・お腹のラインが地面の方に傾いている→BCS4
・お腹のラインが地面に着きそう→BCS5

大型猫や成長がゆっくりの猫種には当てはまらない場合もあります。

愛猫の理想体重がわからない時は、自身で判断をせずに、獣医師さんに相談をすることをおすすめします。

愛玩動物看護師 渡邉鈴子さん
BCSの画像はインターネットに掲載されています。画像を見ながら測定してみてください。ちなみに犬用もありますので犬を飼っている方は併せて確認してみるといいでしょう。

 

肥満猫

肥満になる原因

キャットフードやおやつの与え過ぎ
年齢とフードがあっていない
運動量が少ない
避妊、去勢後の体質変化に気づかない

猫が肥満になってしまう原因は様々考えられます。

 

キャットフードやおやつを与えすぎる

愛猫がおいしそうにいっぱい食べてくれるからと、キャットフードを与え過ぎてしまうと肥満になってしまいます。

体重によって1日に必要な摂取量や栄養素は決まっています。それ以上を食べさせてしまうと、栄養過多になり太ってしまいます。

かわいくねだられたとしても、愛猫の健康のために心を鬼にして、ご飯やおやつを過剰に与えることは控えることをおすすめします。

おやつを与える際には1日の摂取カロリーを考慮して与えましょう。例えば、おやつを与えるのであればフードの量を少なくするなど工夫が必要です。

 

キャットフードの質がよくない

スーパーやドラッグストアなどで気軽に買える安価なキャットフードは、主原材料として穀物を使用しているものが多いです。

穀物の中でも、特にトウモロコシ粉や小麦などは他の穀物と比較してもエネルギーの代謝が悪く、体に残りやすいです。また、猫には基本必要がない栄養素である糖質も多く含まれています。

その結果、内臓脂肪が蓄積されたり、糖尿病や脂肪肝になったりといったリスクが生じます。

「食べさせなくても問題はない」食材であり、また、摂取し過ぎると下痢や嘔吐などの消化不良も起こします。

以上のことからも、特に肥満を気にする愛猫には与えることを控えた方が良いでしょう。

 

年齢とフードが合っていない

年齢を重ねると運動量が少なくなり、それに伴ってカロリー消費も落ちてきます。

シニア猫に、今まで通りのキャットフードを、活動が活発な成猫時と同じ量与え続けると、カロリーを消費しきれず、気づかないうちに太ってしまいます。

今は、子猫用、成猫用、シニア用など、それぞれのライフステージにあったカロリー、栄養素が配合されたキャットフードが発売されています。

愛猫の成長やその時の体調、運動量に合わせて適切なキャットフードを選ぶことが大切になります。

 

運動の量が少ない

太る原因の代表ともいえるのが運動不足です。

特にお家の中で飼われている愛猫の中には、性格や年齢によっては運動が嫌いな愛猫もいます。

そのような愛猫を自発的に遊ばせるのは難しいので、なんらかの対策や工夫が必要です。

例えば、キャットタワーを置いてみたり、時間を作ってこちらから遊びに誘ってみたり、愛猫が立ち寄ることの多い水飲み場やトイレなどの場所をそれぞれ離して置くことで、動く回数を自然と多くしたりなどが考えられます。

愛猫が自ら「遊びたい」と思ってくれるような環境づくりをしてあげられたら良いですね。

 

避妊・去勢後の体質変化に気づかない

一般的に、避妊や去勢後は太りやすくなるといわれます。それは、運動量やカロリー代謝が落ちやすく、ホルモンバランスの影響により食欲が増すからです。

年齢を重ねた時と同様に、今まで通りのご飯を与えていると太ってしまうこともあります。

避妊、去勢後用やカロリーが控え目となっているキャットフードに切り替えてあげると良いでしょう。

運動もできるだけさせたいところなので、おもちゃやキャットタワーなどを上手く活用することをおすすめします。

 

肥満の猫のダイエット方法<食事編>

肥満猫

ダイエットには、まずは食事の管理が大切になります。

 

適切な量を計量する

愛猫を肥満にさせないためには、飼い主さんが食事の管理をしっかりと行い、適切な量のキャットフードを与えることが大切です。

キャットフードのパッケージに、年齢や体重別の給餌目安量が記載されているので、それを参考にするのが良いでしょう。

健康であるか、避妊や去勢済みか、子猫かシニア猫か、妊娠中か、肥満ぎみかなど、猫それぞれの年齢や体型により適量は違います。

適正なフードの量は、下記の計算式で求められます

成猫:体重×70〜80kcal=必要kcal
肥満でダイエットが必要な猫:理想体重×35〜40kcal=必要kcal

キャットフード100gあたりのカロリー数から、それに合わせたカロリーを摂取できる量のキャットフードを与えます。

もし、愛猫に与えるべき適正量がわからない場合は、かかりつけの病院の獣医師に計算をしてもらうと良いでしょう。

 

食事の回数を増やす

肥満でダイエット中の愛猫には、ご飯をあげる回数を増やすこともおすすめです。この時、トータルで与えるフードの量を増やすのではなく、1回に与える量を少なくして回数を増やします。

食べたフードを消化し、吸収をするにもそれなりのエネルギーを使います。必要な量のフードを細かく回数を分けて食べることにより、消費エネルギーが高くなります。

飼い主さんの生活に合わせて無理のないよう、適正量を1日3〜5回に分けて与えてあげるのが理想です。

 

決まった時間に与える

毎日決まった時間にフードを与えることも、肥満防止に良い作用をもたらします。

フードを与える間隔が短いと食べないこともあります。逆にフードを与える間隔が長いと、急いでフードを食べてしまい、消化不良を起こす恐れがあります。

また、決まった時間ではなく、飼い主さんの気分で与えてしまっていると、愛猫はいつフードを貰えるかわからず、お腹が空く度に鳴いてねだったり、貰えないストレスで早食いをしてしまう可能性もあります。

いつも決まった時間にフードを与えていれば、鳴いてねだったり、暴れたりすることも少ないでしょう。

愛玩動物看護師 渡邉鈴子さん
人と同じようにストレスを紛らわそうとして食欲が増すこともあるそうです。あまりストレスを与えないようにご飯の与え方や回数などルールを作るといいでしょう。

早食いを防止する

肥満の猫は、早食いをしがちです。早食いをすると、満腹中枢がすぐ働かず、食べ終わっても満腹感を得られずにまだ足りないと感じてしまいます。

時間をかけてゆっくりと食べれば、満腹感も得られるうえ、誤飲や吐き戻しの防止にも繋がります。

愛猫がどうしても早食いをしてしまう時は、迷路型や突起のあるお皿にフードを入れてあげると、一気にかき込むことができず早食い防止になります。

ゆっくりとフードを食べさせることは、ダイエットにも好影響です。ペットショップやホームセンターに、早食いを防止できる色々な種類のお皿が売っているので、そのようなお皿を上手に活用すると良いでしょう。

 

ダイエットフードに切り替える

ダイエットをさせる時に、一番してはいけないことはフードを極端に減らすことです。量を減らすのではなく、ダイエットフードでカロリーを調整することをおすすめします。

ダイエットフードを選ぶポイントとしては、まず猫に必要な栄養素であるタンパク質が豊富に含まれていることが重要です。

猫の三大栄養素は「タンパク質」、「炭水化物」、「脂質」です。

猫は、タンパク質から炭水化物や脂質を生成する酵素の働きが高い動物です。逆に、炭水化物や脂質からタンパク質を生成することはできません。

タンパク質は三大要素のうちで唯一、体内で生成できない栄養素のため、外部の食材から摂取する必要があるのです。

食事に含まれるタンパク質量が少ないと、タンパク質不足が起きて、免疫力の低下を始め、様々な不調を引き起こします。

最近市販されている猫用のダイエットフードは、良質なタンパク質はもちろん、ビタミンやミネラルなどの栄養素の配合も必要基準を満たすように作られています。

また、適度な食物繊維も含まれていれば、肥満の猫でも満腹感を得られるでしょう。

愛玩動物看護師 渡邉鈴子さん
市販のフードにはビタミンやミネラルが十分に含まれていることから、サプリメントを改めて与えなくても問題ありません。栄養素の過剰によって病気を引き起こすこともあるので注意してください。

肥満の猫のダイエット方法<運動編>

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ダイエットには、食事の管理を行うだけでなく、適度な運動をさせることをおすすめします。

 

キャットタワーで運動させる

猫は本来、木に登ったり塀に登ったりと高い所に好んで登る習性があるため、高低差のある運動をさせると良いといわれています。

また、高低差のある運動をさせることにより、愛猫のストレスの解消にもなります。

室内飼いの肥満の猫には、キャットタワーを置いて運動を促すことをおすすめします。

キャットタワーには、愛猫が好むおもちゃや隠れ家にもなるボックスが付いていたり、柱が爪研ぎ仕様になっていたりと、たくさんの種類があります。

愛猫の好みに合わせたキャットタワーを選んであげると、喜んで運動をしてくれる可能性が大きいです。

また、どうしてもなかなかキャットタワーに登ってくれない愛猫には、猫じゃらしやおやつを上手に使って誘導し、キャットタワーに興味を持たせる工夫をすると良いでしょう。

おもちゃを与えて運動させる

自発的に運動をしない愛猫には、飼い主さんがおもちゃを使って一緒に遊んであげてください。

 

釣竿系のおもちゃ

猫のおもちゃをいえば猫じゃらし、といわれるくらい代表的なおもちゃです。

釣竿状になっていて、先に付いたフワフワのボールや鳥の羽を愛猫が追いかけて遊びます。

飼い主さんが愛猫の様子を見ながら運動させられるので、体を動かすことが苦手な肥満の猫にも無理をさせず、飽きさせないように運動させることができます。

 

トンネル系のおもちゃ

猫は狭い所や筒状になっている所をくぐることを好むため、トンネル状のおもちゃを置いておくだけでその中をくぐって遊んでくれます。

飼い主さんがトンネルの反対側から猫じゃらしなどで遊んであげると、より楽しく運動をしてくれるでしょう。

爪研ぎが一緒になったものや、おもちゃが付いているものなど、愛猫が興味を持ってくれそうな商品がたくさんあります。

ただ、肥満の猫の場合、トンネルのサイズが小さすぎるとくぐり抜けることができないので、愛猫のサイズにあったトンネルを探してあげると良いでしょう。

愛猫の健康のために肥満を放置しないことが大切

肥満の猫

肥満は、様々な病気を引き起こす可能性があります。肥満を放置することは、愛猫の健康にとって良くないことです。愛猫に健康で長生きをしてもらうためにも、飼い主さんがしっかりと管理をしてあげることが何より大切になります。

かわいくねだられると、ついついおやつをたくさんあげてしまいがちですが、愛猫の健康を考え、そこはぐっと我慢をしてくださいね。

愛玩動物看護師 渡邉鈴子さん
肥満は様々な病気になる原因といわれています。特に糖尿病などは酷くなると衰弱していきます。健康が第一ですので、適度なご飯と適度な運動を心がけましょう。

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