人間と同じように、猫にも病気を回避できるワクチンがあり、飼育する上でとても重要です。感染したら命に関わる病気もありますし、何よりも大切な猫につらい思いはさせたくないですよね。
この記事では、猫の予防接種について、ワクチンが対応する病気と種類、値段やワクチンを打つ時期をまとめました。
ワクチンが存在する猫の病気は?症状は?
世界小動物獣医師会(以降WSAVA)において、犬と猫のワクチネーションガイドラインが提示されています。
内容は
1.動物に優しいエビデンスに基づいたワクチネーションの実施
2.ワクチンを全ての子犬・子猫に適切な時期に接種すべきコアワクチン及び飼育状態に合わせて接種すべきノンコアワクチンに分類する
3.ワクチンの過剰接種を避けるためコアワクチンは3年以内に接種しない。
というものです。
猫のワクチン予防接種が可能な病気は6つです。
その中でコアワクチンは、どれも命に関わる危険な病気で、「猫汎白血球減少症の原因である猫パルボウイルス(FPV)」「鼻気管炎を起こす猫ヘルペスウイルス(FHV)」「風邪の症状や口内炎を起こす猫カリシウイルス(FCV)」の3つです。
ノンコアワクチンは、「猫白血病の原因の一つである猫白血病ウイルス(FeLV)」「免疫不全を引き起こす(FIV)」「呼吸器や眼を侵す猫クラミジア感染症(FChF)」と分類されます。
特に多頭飼いや放し飼いなど、他の猫とふれあう機会が多い場合は予防接種をしておいたほうが安心です。
猫汎白血球減少症(FPV)
伝染性の胃腸炎で、とても死亡率が高い病気です。感染した猫との接触や尿、嘔吐物、便との接触でも感染することがあります。
子猫の場合だと、わずか1日でも死亡してしまうことがあるとても怖い病気です。
猫ウイルス性鼻気管支炎(FHV)
くしゃみや目やに、発熱、食欲不振などの症状が出ます。悪化すると衰弱や脱水症状が起こり、死亡してしまうこともあります。
特に子猫や老猫、体調不良で弱っている猫の場合は注意が必要です。
猫カリシウイルス感染症(FCV)
「猫ウイルス性鼻気管支炎」と混合感染することが多く、クシャミや目やになどの風邪の症状が出ます。
「猫カリシウイルス感染」から肺炎を引き起こすと、最悪の場合死亡してしまうこともあります。
猫白血病ウイルス感染症(FeLV)
感染している猫との接触や、母子感染によってうつる病気です。急性症状として、食欲不振、貧血、リンパ節の腫れなどが現れます。
急性症状が落ち着いても、ウイルスが体内で生き延び、活性化すると、「リンパ腫」「腎臓病」「白血球減少症」などの症状が現れます。
猫免疫不全ウイルス感染症(FIV)
免疫機能の低下を引き起こす病気で、感染した猫との噛み付き合い、交尾により感染します。
感染した最初の数ヶ月は風邪や下痢などの軽い感染症状が見られますが、その後は発症に至るまで、目立った症状が出てこないのも特徴です。
免疫機能が低下し、口内炎などのさまざまな症状が出てきます。最終的には死に至る病気です。
猫クラミジア感染症(FChF)
猫クラミジア感染症は正式には「クラミドフィラ フェリス」と呼ばれる病気です。感染している猫との接触により感染します。
感染して3~10日後は通常片方の目から炎症が始まり、粘膜性の目やにが出ます。また、化膿性の結膜炎や鼻炎の症状も現れ、鼻水やくしゃみがでてきます。ひどい場合は、気管支炎や肺炎を併発することもあり、重症化すると命の危険性があります。
猫のワクチンの種類と値段
猫の三種混合ワクチン
猫の三種混合ワクチンは別名コアワクチンとも呼ばれ、猫を飼育する上で必要不可欠なワクチンを厳選しています。
「猫ウイルス性鼻器官支炎」「猫カリシウイルス感染症」「猫汎白血球減少症」の3つの病気に対するワクチンで、値段は4,000円~6,000円程度です。
「猫カリシウイルス感染症」はいくつかのタイプのウイルスがありますが、そのうちの1つに対応しています。
猫の四種混合ワクチン
三種混合ワクチンに加え、ノンコアワクチンである「猫白血病ウイルス感染症」に対するワクチンが追加されています。値段は5,000円~7,000円程度です。
猫の五種混合ワクチン
四種混合ワクチンに加え、ノンコアワクチンである「猫クラミジア感染症」に対するワクチンが追加されています。値段は5,500円~7,500円程度です。
猫免疫不全ウイルス感染症に対する単体ワクチン
猫免疫不全ウイルス感染症は現在、単体でしか接種できないため、基本的には混合ワクチンと組み合わせて接種します。
猫にワクチンを打つ時期は?
猫のワクチンの接種計画は、「ワクチネーションプログラム」と呼ばれていますが、状態や生育環境によって大きく変わってきます。
犬や猫は、人などのようにIgG抗体と呼ばれる免疫の胎盤移行が少なく、多くが母乳によって獲得します。
母乳を飲んで育った猫とそうでない猫では、初めてのワクチン接種の時期が異なります。母乳を飲んで体内に抗体がある子猫は生後8週頃から、そうでない子猫は生後6週頃から初めてのワクチン接種がはじまります。
重要なことは、最終ワクチンを16週齢以降に接種することです。これは、母乳からの免疫がなくなる時期に予防注射を接種しないと強固な免疫が作れないからです。
そのために、最新の研究でこの時期が勧められており、2回、3回などの回数を接種すればいいという問題ではありません。
どの種類のワクチンを打つのかは、獣医さんと相談してワクチネーションプログラムを個別に作っていきましょうね。
愛猫のワクチン予防接種は長生きにもつながる
猫のワクチンの副作用として、アレルギーなどの他、接種後肉芽腫の報告があります。怖い腫瘍ですので、接種部位を尻尾、足先、側腹部の接種が勧められています。
また、WSAVAの提言でもある「極力接種回数を減らす」ため、抗体検査を行ってもらい、陽性なら接種しない、陰性なら接種するという選択肢もあります。その際、抗体検査が有効なのはFPVだけとなりますので注意が必要です。
適切にワクチンを予防接種すれば、長生きにもつながりますよ。