可愛らしい姿から「砂漠の天使」と呼ばれるスナネコをご存知でしょうか。
その名のとおり砂漠に生息する猫で、猫好きではなくても愛らしい姿に目を奪われてしまうこと間違いありません。
この記事ではスナネコの特徴や性格、ペットとして飼えるのかをまとめました。
スナネコとは?どんな特徴がある?
スナネコとは、砂漠エリアに多く分布する食肉目ネコ科ネコ属に分類される食肉類です。
英名は「Sand cat」、学名は「Felis margarita」で、スナネコは和名になりますよ。
分布
スナネコの分布域 | |
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アラブ首長国連邦 | アルジェリア |
エジプト(ナイル川以東) | オマーン |
カザフスタン | カタール |
クゥエート | サウジアラビア |
トルクメニスタン | モロッコ |
スナネコは中東の砂漠地帯に集中して分布しています。
その他モーリタニアに分布すると考えられているものの、標本の採取例や撮影された記録はありません。イエメン、イスラエル、パキスタンでは生体が確認できずに絶滅したともいわれています。
また、エジプトのナイル川以西では未確認となっています。
特徴
体長 | 45~57cm(平均50cm) |
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尾長 | 28〜35cm(平均20cm) |
体重 | 1.8〜3.6kg |
スナネコの大きさは、体長45~57cm、尾長28~35cm、体重1.8~3.6kgほどです。大きい個体でも3.6kg前後、尾長も一般的な猫と比べて短めであることから小柄の肉食獣であることがわかりますね。
ただ、西から東エリアに進むにつれて身体は大きくなる傾向がありますよ。
見た目の特徴
全体的な大きさは、一般的な猫に比べて小さい猫種です。頭部は幅広く耳が大きくとがっていることから、キツネのような印象をしています。
また、耳が頭の両脇の低い部分に離れて位置しているのもスナネコの特徴で、外に飛び出している耳の部分(耳介)は、幅広い三角形をしています。
被毛の特徴
耳の内側はフサフサとした長い体毛でおおわれており、耳の中に砂が入るのを防ぐ役割を果たしています。耳同様に足裏も長い体毛でおおわれていますが、これは暑い砂漠での活動に適応するためと考えられています。
日中の気温が摂氏80℃にもなる砂漠でやけどしないようにするため、足が砂漠の砂に沈み込むのを防いでいますよ。
毛色の特徴
毛色は全体的に茶色っぽい黄色をしており、青白い線が走っています。ただ、この線には個体差があり、見えないスナネコもいますよ。
また、背面には明灰黄色や灰色をした不明瞭な横縞が8~9本ほど入っており、尾は先端に近い部分に黒い輪っか状の模様があります。尻尾の先端は黒っぽい色をしています。
スナネコの赤ちゃんは斑紋(ぶち模様)がくっきりとしていますが、大人になると薄くなっていきます。
夜行性
スナネコは主に夜行性で、昼間は巣穴に隠れ活動はほとんどしません。砂よりも目の細かい粘土質の砂漠を好み、日中は岩砂漠や礫砂漠・砂砂漠・砂丘などに身を潜め、暑さや外敵から身を守っています。
巣穴はキツネ類やヤマアラシ類などの古巣を利用することもありますが、自分で掘ることもありますよ。過去にはカラクム砂漠で入り口が1つ、奥行きが3mもの巣が見つかった例も報告されています。
ちなみにキジクルム砂漠に生息するスナネコは昼行性で、暑い時期のみ夜行性になります。
餌
げっ歯類 | トゲマウス属・アレチネズミ属・ミユビトビネズミ属など |
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幼獣類 | ケープノウサギなど |
鳥類 | スナヒバリ・ハシナガヒバリなど |
爬虫類 | サバクオオトカゲ・ヘリユビカナヘビ属・スナトカゲ・スナクサリヘビ属など |
肉食のスナネコは主にげっ歯類を餌としており、その他幼獣、鳥類、爬虫類、昆虫なども食べます。
ただ、生息地によってメインとなる食べ物には違いがあり、カクラム砂漠では約65 %をオオスナネズミを含むげっ歯類、キジルクム砂漠では約88 %をオオスナネズミが占めていたという調査報告もあります。
水分は、水が飲める環境であれば飲水も行いますが、主に食物から摂取しています。
繁殖
繁殖期 | 3~4月(地域差あり) |
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妊娠期間 | 59~67日 |
出産頭数 | 3匹前後 |
スナネコの生態については不明な部分も多いですが、繁殖期(年2回という説もあり)は3~4月頃が最も多いとされています。地域差もあり、サハラ地区では1~4月に繁殖しています。
妊娠期間は一般的な猫と同じで、59~67日程度(約2か月間)ですよ。 1度の出産で3匹程度、多いと8匹近く生まれます。
行動
一般的なネコ科と同じで繁殖期以外は単独で行動するスナネコですが、繁殖期に入るとオスが甲高い声で鳴きメスに自分の居場所を伝えます。
メスのスナネコは聴力が優れているので、遠方にいるオスの声を正確に聞き分け居場所を的確に突き止めることができます。
この聴力は、地中にいる獲物の些細な音を聞き取るなど、繁殖期以外でも役立っています。
天敵
大型の猛禽類
食肉類系の哺乳類
スナネコの天敵となるのは、同じ行動時間帯に活動する大型の猛禽類や食肉類系の哺乳類などです。大型の食肉類(カラカル・キンイロジャッカル・タイリクオオカミなど)や、大型の鳥類(イヌワシなど) などですね。
小型のスナネコの場合は丸呑みされてしまうこともあるヘビ、スナネコの赤ちゃんだとアカギツネやワシミミズクも天敵となります。
スナネコの性格は?寿命は?
性格
臆病
警戒心が強い
気性が荒い
人に懐かない
スナネコは人懐っこそうな見た目をしていますが、臆病な面もあり常に周囲を警戒しています。
人間に懐くことはほとんどありません。
一般的な猫に比べて小柄で可愛らしい見た目をしていますが、牙が鋭く気性が荒いので、野性味のある猫種と言えます。
寿命
10年~14年
野生環境で生きるスナネコは、生後9~14ヶ月で性成熟するなど成長が早いため寿命は短めです。
最大で14年以上生きた個体もいるようですが、生後10年までの死亡率は10%と下がります。多くの個体は生後10年を過ぎるまでに死亡していると考えられていますよ。
人に慣れることがほとんどないため飼育下での寿命データは不足していますが、734頭の出生記録によれば約30%が生後30日に死亡、約13%が1年以内に死亡しています。
出典:OXFORD ACADEMIC mammalian species
スナネコはペットとして飼うことができる?
ペットとしての飼育は不可
可愛らしい見た目でペットとして飼いたくなってしまいますが、スナネコはペットとして飼育はできません。
理由は以下4つが挙げられます。
理由1:スナネコは絶滅危惧種になる可能性がある
スナネコは絶滅危惧種に指定されていませんが、その可能性は十分にあります。
絶滅になる理由としては、放牧などによる生息地の破壊、獲物の減少、内戦、人為的に移入されたイヌ・ネコによる捕食や感染症の伝搬、キツネ類やキンイロジャッカル用の罠による混獲などによる影響が挙げられています。
イエメンでは1952年以降すでに記録がなく、イスラエルでは2000年に調査が行われましたが生息が確認されず、絶滅したと考えられています。
また、トルクメニスタンのカラクム砂漠では約25年報告例がありません。パキスタンでは、1990年代後半の地下核実験で生息地が大きな影響を受けたと考えられています。
参考データとして、1986年時点での飼育数は6施設44匹だったのが2013年の飼育数は44施設で174匹と報告されています。
理由2:スナネコの保護活動が行われている
現在、世界中の保護下のスナネコの個体数は120匹程度といわれています。
あくまでも保護下での個体数なので、実際はもう少し生息している可能性もありますが、貴重な動物であることがわかりますね。
保護したスナネコの繁殖活動については、アラビア半島アラブ首長国連邦を構成する首長国アブダビの「アル・アイン動物園」が中心となって行っています。しかし希少種であるゆえ、生態が不明で繁殖は困難を極めているのが実情です。
ちなみに「アル・アイン動物園」は、4,000頭以上の動物のうち30%(180種類)の動物が絶滅危惧種となっています。
理由3:飼育環境を整えることが難しい
スナネコは乾燥した砂漠に生息している動物です。動物園などであれば多少環境を整えることは可能かもしれませんが、一般的な家庭では飼育環境を整えることはとても難しいといえるでしょう。
スナネコが住みやすい環境を作ってあげることが出来ない場合、ストレスを溜めてしまうかもしれませんね。また、乾燥した砂漠とは違い、高温多湿の環境である日本では、体調を崩してしまう可能性があります。
このことから、日本という国はスナネコにとって住みにくい国と言えます。
理由4:人間に懐かない
スナネコの性格としても、気性が荒く人間に懐かないという点は、ペットとしての飼育に不向きといえます。一般的な猫との関係性を求めても、難しいでしょう。
以上のことから、スナネコは飼うことが出来ないと言えます。
スナネコは日本で会える?
日本の動物園で会える!
那須どうぶつ王国(栃木県)
神戸どうぶつ王国(兵庫県)
長崎バイオパーク(長崎県)
ネオパークオキナワ(沖縄県)
日本では「那須どうぶつ王国」「神戸どうぶつ王国」「長崎バイオパーク」「ネオパークオキナワ」の動物園でスナネコに会うことができますよ。
赤ちゃんを見るならどこ?
那須どうぶつ王国、神戸どうぶつ王国、長崎バイオパークにて赤ちゃんが生まれ、公開されました。
スナネコの赤ちゃんはとてもかわいくて飼えそうと思ってしまいますが、飼育難易度は非常に高く、野生動物であるため一般の家庭で飼う人が増えてしまうと乱獲や密猟問題になってきてしまいます。
スナネコを見たい飼いたいと思う方は、上記の動物園に見に行ってみてください。
海外
ラマト・ガンサファリパーク
ブリストル動物園
シンシナティ動物園
リンカーン動物園
海外の動物園ではイスラエル・テルアビブ近郊の「ラマト・ガンサファリパーク」、イギリスの「ブリストル動物園」、アメリカ・オハイオ州にある「シンシナティ動物園」、シカゴの「リンカーン動物園」などで会うことができますよ。
砂漠の天使「スナネコ」が増えますように
いかがでしたでしょうか?
まだ生態や生息している場所など謎多きスナネコですが、それゆえにこの可愛らしい姿を一度は見てみたいと思った方も多いのではないでしょうか。
現在日本の動物園でも会うことが出来ますので、機会があれば行ってみて下さいね。
スナネコが絶滅することなく生き抜いていける環境づくりが進み、今後も繁殖活動が成功することを願うばかりです。
猫の種類や人気については下記の記事を参考にしてください。