愛猫を見ているだけで「あ〜、癒される」と幸せを感じる飼い主さんも多いですよね。
日常的に私たち人間へ癒しを与えてくれる猫ですが、実はその癒し作用が科学的にも証明されています。
この記事では、猫がもたらす身体的・精神的・子供への癒し作用などをまとめました。
目次
人がストレスを感じるとどうなるか
人がストレスを感じると、脳から「ストレスホルモン」が分泌されます。
ストレスホルモンの分泌後は、ストレスに対抗できる身体を作るためにエネルギーが筋肉へ優先的に送られます。
また心臓の鼓動や肺の動きが早くなり、呼吸が荒く脈拍数も増加、体温や血圧の上昇も見られます。
逆にストレスと対峙した際の優先度が低い消化器官は機能が低下し、耳も聞こえづらく、視野も狭まることがあります。
これらは、優先度の高い器官へエネルギーを重点的に送ることでストレスから身体を守る自己防衛反応であるといえます。
ストレスが長期化するとどうなるか
上記で紹介した反応は短時間で落ち着くことがほとんどですが、ストレスを日常的に感じるようになると、身体がストレスと「戦う」体制から「耐える」状態へと変化します。
脳の活動が最優先され、ただちに生命の維持に関わらない機能は低下します。免疫抑制作用や抗炎症作用が制御されるため、病気が発症しやすく傷も治癒しにくくなり、急加速で身体が老化していきます。
またエネルギーを蓄えるために血糖値が高くなる傾向も見られるほか、身体は疲労していても常に脳が活発に働いているため、眠ることができず不眠状態が続くこともあります。
ストレスが長期化すると、このように全力で脳の活動エネルギー確保が行われるのです。
猫の癒やし作用5つ【身体編】
病気のリスクが減少
血圧やコレステロール値が下がる
免疫力が高まる
ケガの治りが早い
うつ病や認知症の助けになる
猫が人間の身体に与える癒し作用を紹介します。
病気のリスクが減少する
米国ミネソタ大学の長年に渡る研究で、猫を飼っている飼い主さんにはストレスが少なく、心臓発作が40%、脳梗塞が33%、脳卒中が30%、命に関わる重篤な循環器系疾患が30〜40%もリスクが減ることがわかりました。
また猫と触れ合うことにより血圧が下がったという報告が約80%あることからも、猫には血圧や心拍数を安定させる癒し作用があると考えられます。
2002年の米国ニューヨーク州立大学の研究報告でも、普段ストレスを感じることの多い仕事をしている人が、ペットと触れ合うことでそのストレスが減ったという結果もあがっています。
血圧やコレステロール値が下がる
猫と触れ合うことで、過剰に分泌されると血圧上昇に繋がる「コルチゾール」の分泌が抑制され、その結果血圧が安定するとの研究結果が出ています。
またカナダで行われた研究では、コレステロールを下げる処方薬を服薬するよりも、猫と暮らす生活を送る方がコレステロール値が下がるということがわかっています。
猫がそばにいることにより、高コレステロール症の原因となる「トリグリセリド」(中性脂肪)が減少するとためとされます。
免疫力が高まる
猫が与えてくれる癒しの作用や穏やかな気持ちは、人間のホルモンや神経物質の分泌に大きな影響をもたらし、心と身体をリラックスさせてくれます。
それにより、ストレスの解消や免疫力の向上が期待できます。
ケガの治りが早まる
猫が「ゴロゴロ」と喉を鳴らす音を聞いたことはありませんか。嬉しい時だけでなく、苦痛を感じている時や死の間際などにもゴロゴロという音を鳴らします。
獣医師の診察中に診察台の上でゴロゴロと喉を鳴らしているのは、獣医師に甘えているのではなく、自分を落ち着かせるためである可能性が高いです。
また猫は骨折をした際、ほかの動物に比べて7倍ものスピードで治癒するといわれます。それには喉を鳴らすゴロゴロの周波数(25〜150Hz)が関係しています。
低周波は筋肉を刺激して収縮させるので、腰痛や肩こりの治療、筋肉のトレーニングなどでよく使用されていますが、最近骨折の治療にも役立つということがわかりました。ある有名スポーツ選手が低周波治療を行い早期回復をしたことでも話題になりましたね。
フランスでは、実際に理学療法士が猫のゴロゴロにヒントを得た骨折治療も行われています。
うつ病や認知症の助けになる
猫が人間に与えてくれる無償の愛情は、うつ病や認知症の患者さんの助けになると信じられています。
誰かに必要とされ愛されていると実感することが、病気と闘う活力となり得るのです。
猫の癒やし作用5つ【精神編】
ストレス発散や不安解消
孤独を感じにくい
仕事がはかどる
恋人探しに一役買う
ゴロゴロ音のリラックス作用
猫が人間の精神に与える癒し作用を紹介します。
ストレス発散や不安解消になる
猫と暮らすことにより、「愛情のホルモン」とも呼ばれる「オキシトシン」が多く分泌されます。
オキシトシンにはストレスホルモンの分泌を抑制する作用があり、幸福感が増幅して他人に対して信頼や安心、関心が高く持てるようになります。
スキンシップを取る中で「心地よさ」を感じることにより分泌されるオキシトシンは、人間同士や猫以外のペットとの触れ合いでも分泌されますが、犬より猫とのスキンシップによる分泌量の方が多く、猫の可愛らしい動画を観ただけでもオキシトシンが分泌されるといわれています。
またスキンシップを取ることで人間だけではなく、触られる猫にもオキシトシンが分泌されています。
孤独を感じにくくなる
2003年に豪州で行われた研究で、猫がそばにいることで恋人や子供と一緒にいる時と同じくらいの満足感を得られるという結果が出ています。
心理学の研究において、人と猫の脳は構造が9割がた似ているとされます。それゆえに人と猫の感情の表れに似ている部分が多いのも納得ですね。
猫との暮らしは、人と一緒に暮らすことにとても近いといえます。
また猫は人がかけてくれた愛情を覚えていて、将来その愛を返してくれるとされます。
仕事がはかどる
愛くるしい猫の動画を観た後には仕事がはかどるという人も多いのではないでしょうか。
それはインディアナ大学の助教授が7,000人を対象に行った調査でも実証されています。
仕事が思うように進まず集中が途切れてしまった際に、猫の動画や写真を見ることで余計な力が抜け、リラックスした状態で仕事に向き合うことで仕事がはかどるものと考えられます。
恋人探しに一役買ってくれる
女性は猫を飼っている、または猫が好きな男性に魅力を感じることが多いとされます。
イギリスで行われたアンケートによると、90%の女性が猫を飼っている男性の方が飼っていない男性より魅力的だと回答しています。
小さな命を大切に育てることのできる男性に魅力を感じるのは、ある意味当然のことかもしれませんね。
ゴロゴロ音にリラックス作用がある
猫が発するゴロゴロ、グルルルという鳴き声とは少し違う独特の音は、どうやって鳴らされているのかまだはっきりと解明されていません。
しかし生後2日ほどで鳴らせるようになることから、母猫とのコミュニケーションであると推測されます。
この猫のゴロゴロという音には癒しの作用もあるとされています。
ゴロゴロの低周波音がポジティブな思考と心地よさをもたらし、不安な気持ちを和らげてくれます。
猫の癒やし作用4つ【子供編】
喘息やアレルギーになりにくい
自閉症や発達障害が和らぐ
責任感や共感力が育つ
親友になってくれる
猫が子供の成長にもたらす癒し作用を紹介します。
喘息やアレルギーになりにくい
米国微生物学会総会で2012年に発表された研究結果で、幼い頃から猫と暮らしている子供は、猫から出るほこりの中に混じっている微生物が胃や腸に免疫反応を起こすことにより、喘息の病原体から守られることがわかりました。
これは犬にも同様のことがいえますが、猫の場合「トキソプラズマ」の抗体を生むため、将来的にトキソプラズマに感染をした場合にも重症化が避けられます。
また米国国立衛生研究所は、1歳未満から猫と生活を共にしていた子供は動物や花粉、ハウスダストなどのアレルギーを起こしにくくなるという研究結果を2002年に発表しています。
しかし生まれつき動物アレルギーを持つ子供もいるので、猫を飼育する際は子供に猫へのアレルギーがないかしっかり調べることが大切です。
自閉症や発達障害が和らぐ
豪州のクイーンズ大学で行われた研究によると、普段猫と接している自閉症の子供はそうでない子供と比べて笑顔や人と会話を交わすことが多く、人の顔を見ることができるという結果が出ています。
また米国ミズリー大学研究センターの研究では、猫に限らずペットを飼育している家庭で育つ発達障害の子供は、飼育していない家庭の子供より人付き合いのスキルが高いとの報告があがっています。
どのような性格の猫が合っているのかはまだ研究段階です。
責任感や共感力が育つ
猫を世話することで責任感を育むことができます。
言葉でコミュニケーションを取れない分、猫の気持ちを考えて接することで共感力が養われます。幼い頃に猫を飼っていた人に、人の気持ちを思いやれる心優しい人が多いのもそのためだといえます。
猫との暮らしは、人付き合いのコツを覚えるのにも適しています。
親友になってくれる
ある機関が行なった調査では、約8割の子供が親や友人にも話せないような本音を猫に話すと回答し、また9割近くが猫は親友だと思っているという結果が出ています。
また米国マイアミ大学が学生に聞き取り調査を行ったところ、他人に自分の言動を否定された際に大好きな猫のことを考えると、否定されたことへの感情が薄まると感じていることがわかりました。
猫の癒し作用につながる触れ合い方
猫は自分に与えられる愛情に敏感なため、大きな愛を持って接してくれる人のことが大好きです。怖がらず「大好きだよ」の気持ちを伝えるように優しくなでてあげてください。
頭や尻尾、足先に触れられることが苦手な猫も多いので、猫が怖がらないように手を下からゆっくり差し出して、あごの下から胸にかけてや耳の後ろ、背中などをなでてあげると良いです。
猫がリラックスをしている時になでてあげることをおすすめします。
アニマルセラピーがもたらす作用
動物とふれあうことによりストレスを軽減させたり、気分を前向きにさせたりするセラピーの一つを「アニマルセラピー」と呼びます。
アニマルセラピーの起源は、紀元前400年頃に負傷した兵士のリハビリに馬が用いれられたことにあります。現在でも乗馬療法は有効な手段とされ世界各国で行われています。
アニマルセラピーの導入により、高齢者の病院への通院回数が減少することで1,350億円の医療費削減の推計も発表されています。
またアニマルセラピーは病院での緩和ケアやリハビリのアシストなどで実績があります。
家族の一員として守り守られる存在に
ストレス社会といわれる現代に生きる私たちにとって、日々癒しを与えてくれる猫は心の拠り所ともいえます。
今や猫は「可愛いペット」という立場ではなく、しっかりと「家族の一員」として大好きな家族を守り守られる存在になっています。
可愛いだけでなく人間にとって最高のパートナーである愛猫との絆を、これからも大切に育んでいってくださいね。