ペットショップに行くと、生まれて間もないあどけない子犬・子猫たちの姿に、目が釘付けになってしまう人は多いのではないでしょうか。
でも、もし売れ残って大きくなってしまったらどうなるのでしょう。
この記事では、売れ残りが起こる理由や大きくなった動物たちのその後についてまとめました。
目次
ペットショップでの売れ残り事情
今、日本では多くの子犬がペットショップやインターネット上で販売されており、誰もが気軽にペットを購入できるようになっています。
でも、飼いたいという人が増えている一方で「売れ残り」の子犬・子猫が存在しているのも事実です。
子犬・子猫の売れどき
ペットを飼おうとするとき「子犬・子猫から育てたい」と考える人は多いと思います。実際にペットショップで人気があるのも、生後2~3ヶ月頃の子犬たちです。
現在では動物愛護管理法により、生後56日を経過していない子犬・子猫の販売は禁止されています。
そもそも生後56日を経過していないと社会性が育たず、噛み癖や吠え癖などの問題行動が起こりやすくなります。
大部分の子犬・子猫は、新しい飼い主さんに引き取られますが、生後3ヶ月を過ぎても飼い主さんが見つからない場合は少しずつ値段下がりしていき、5ヶ月頃には最初の売値の半分以下になるケースもあります。
さらに生後半年を過ぎてしまうと、セールでも引き取られることが少なくなります。この頃になると、人見知りがはじまったり個性が出てきたりするので、売れ残りに拍車がかかってしまいます。
ペットショップも大幅に値下げし、どうにか飼い主さんを見つけようと努力しますが、それでも売れ残ってしまったときは、譲渡会に参加し里親を募集することになります。
どれくらいの動物が売れ残っている?
少し古い情報になりますが、環境省が平成22年度に実施した調査によると、犬は約5,000匹、猫は1,200匹が売れ残ったことが明らかとなりました。
現在では動物愛護管理法も改正され、平成22年度から売れ残ってしまう動物たちは減ったかもしれませんが、依然と売れ残ってしまうこともあります。
ペットショップで売れ残りが起こる理由
供給過多
性格や動きで敬遠される
販売価格が高い
売れどきが短い
人気犬種・猫種は在庫を抱えたい
今や日本はペット大国ですが、犬・猫の繁殖量に比べて引き取ることができる人の割合は少なく、需要と供給のバランスが取れていないのが実情です。
とはいえ、ペットショップやブリーダーにとっては、人気の犬種・猫種は多ければ多いほど儲かるため、在庫を抱えがちになります。また自社で大量生産するショップもあり、当然供給過多になります。
性格や動きで敬遠される
ペットショップのショーケースから見るだけでは、犬の性格や動きがよく分からなかったり、先住犬との相性が悪そうに感じたりということも、売れ残りの要因の一つといえます。
販売価格が高い
最近では、ペットショップで販売されている犬・猫の平均販売価格は30万以上となっています。
被毛の状態や基礎疾患などによっては値段が変動しますが、迎え入れにはとてもハードルが高くなってきているのではないでしょうか。
さらには、地方から都心に人が集中し、犬・猫を飼える状況ではなかったり、日本の平均賃金自体も右肩下がりとなっており、金銭面的にもペットを飼える人が少なくなっています。
売れどきが短すぎる
犬が売れる年齢はとても短く、人気の犬種以外は、高値取引が可能な時期は生後3ヶ月未満がほとんどです。3ヶ月を過ぎると人気にかげりが出て、半年を過ぎると売れ残り対象となります。
売れ残った子犬のその後
・ブリーダーや繁殖業者に譲渡
・お店の看板犬、看板猫として継続して飼育される
・一般のお客さんに無償で譲渡
・動物愛護団体に引き取られる
・保健所に引き取られる
・実験動物として譲渡販売される
どんな商品もそうですが、売れ筋の商品はどんどん入荷しますが、売れない商品は処分されます。ペットショップに並ぶ子犬・子猫も「商品」として生まれてくるので、同じことがいえます。
運が良いとお店の看板犬になったり、店員さんの友人に引き取られたりします。また系列店の安売りショップで再販されることもありますが、こうしたケースは稀といえます。
売れ残った多くの子犬は、繁殖業者に引き渡されひたすら繁殖を繰り返す、実験用の動物を扱う業者に売却される、保健所に持ち込まれ処分されるといった運命をたどります。なかには山林に捨てる悪徳業者もいます。
ただ人気の犬種の場合は、少し大きくなっても売れる見込みがあるので、例外としてペットショップに残る場合もあります。
2013年に動物愛護法が改正
以前は、一部の悪質なペットショップが売れ残った犬猫を保健所に持ち込んで殺処分するケースがありました。しかし、2013年に動物愛護法が改正され、都道府県の保健所や動物愛護センターは、悪質な動物取扱業者のペットの持ち込みを拒否できるようになりました。
それでも店員が個人を装って持ち込むこともあり、悲しい運命をたどる犬猫はゼロになっているわけではありません。
引き取り業者の需要が増える
現在、売れ残ったり繁殖が終わったりした犬を有料(1万円前後)で引き取る「引き取り業者」の需要が増えています。
引き取り業者自体は違法ではありませんが、餌も与えず、散歩もさせず不衛生な狭い檻に押し込み、皮膚病やその他の病気などで、衰弱・死亡させる悪質な業者も存在します。
ペットショップで売れ残りが起きないペット先進国の対策
ペット先進国といわれる欧米諸国の中には、ペットショップでの動物販売は虐待にあたるとして禁じている国もあります。
禁止の国でペットを飼う場合は、信頼できるブリーダーから迎えるほか、保護施設から引き取るのが一般的となっています。これは、ペットを「物」ではなく「パートナー」として考えているからです。
日本でも不幸な命をなくす取り組みとして、保護施設や里親募集サイトなどの利用をより身近なものにしていきたいですね。
ペットショップでの売れ残りをなくすためには
今メディアやNPOで、保護活動や処分ゼロに向けて取り組んでいますが、現実はうまく進んでいません。
多くの犬を保護した人が手に負えなくなり、犬や猫たちを置き去りにしてしまった例や、保護施設に収容されたものの持病や怪我、年齢がネックで里親が見つからないといった例もなくなりません。保護犬ばかりが増えて手が回らないのが現状といえます。
法改正が求められる
売れ残りの問題は、ブリーダーからペットショップへ流れる流通システムにあります。売られる子犬・子猫の数よりも、生産過多によって売れ残った結果、殺処分される犬の数の方が多いのが現状です。
そのため、繁殖時期や繁殖回数の制限を設けることや、取り扱い業者の責任を増やすといった法改正の検討が愛護団体や専門家からも求められています。
ペットショップの犬・猫を殺処分から救う方法
ペットショップで売れ残ってしまった犬や猫はすべての子たちが殺処分されるとは限りません。しかし、中には保健所に持ち込まれて殺処分されてしまう子もいます。
そんな犬・猫を救う方法としては、自ら飼い主になることと、動物愛護のボランティアに参加する2つの方法があります。
迎え入れる際の年齢の幅を上げてみる
犬や猫を迎える時、誰しもが小さい時から育てたいという気持ちがあります。ですが、もし本当に殺処分から救いたいのであれば、迎える年齢の幅を上げてみるのもおすすめです。
上述しているように、生後3か月を過ぎると購入したいと思う人が残念ながら少なくなってきますので、その子たちもお迎えする対象にしてみましょう。
ある程度成長している犬や猫は性格がほとんど決まってくるので、飼い主さんや先住犬・先住猫との相性が分かりやすいです。
また、やんちゃ盛りが過ぎているので行動も穏やかなことが多いです。
ボランティアに参加してみる
動物愛護のボランティアに参加するのもおすすめです。
ボランティアとして動物を保護し、里親さんを探すというだけでも犬・猫にとっては一時的な居場所ができ、救われているのではないでしょうか。
都心部の場合、シェルターがない団体さんも多いですが、その中でも預かりボランティアというものもあります。いろいろな形のボランティアがあるので、ぜひ検討してみてもいいでしょう。
すべての小さな命が新しい家族と出会えますように
子犬たちが売れ残ってしまう理由や問題点についてご紹介しました。
私たちに癒しや幸せな気持ちをもたらしてくれる犬たち。どんなに小さな命でも、新しい家族と巡り合えることを願うばかりです。これを機会にペットの命について考えてみてくださいね。