春先などに「あお〜ん」と普段とは違う鳴き方をしている猫の姿を目にしたことはありませんか。この鳴き方は発情を迎えた猫が発する鳴き声です。
発情は子孫を残すための猫の本能です。猫は発情期を迎えるとどのような行動をとるのでしょうか。
この記事では、猫の交尾が始まる年齢や流れ、発情期の特徴、飼い主さんが注意すべきことなどをまとめました。
目次
猫の交尾は発情期を迎えてから
猫の発情期は性成熟したメスにのみ起こる現象です。発情期のメスの鳴き声やフェロモンによって刺激されることでオスも発情します。
性成熟の時期
猫の性成熟の時期は品種や生まれた季節、生活している周辺の環境など様々な要因により左右されます。
性成熟することによって、はじめて交尾の準備が整います。
発情が始まる季節
発情が始まる時期には日照時間が大きく影響しています。日照時間が14時間を超えると発情が訪れます。日照時間が比較的長くなる春が発情のピークになっています。
しかし、現代では家の中で猫を飼育することから家の中の照明によって発情時期が変わることがあります。12時間以上、照明をつけている場合は、季節関係なしに発情し、回数も増える傾向があります。
発情期のサイクル
春が発情のピークとなりますが、発情期は春だけではなく1年に数回見られます。
発情期のサイクルは約2週間といわれています。そのサイクルを数回繰り返し、休息を挟んだのちに再度発情期を迎えます。
猫の交尾に必要な発情期のサイン
発情期を迎えた猫には、普段とは違った行動や症状が見られることがあります。
発情期を迎えたメス猫の行動
発情期を迎えたメス猫には下記のような行動が多く見られます。
・喉をゴロゴロと鳴らして人や物に体を擦りつける。
・発情期特有の唸るような鳴き声を発する。
・オスを惹きつけるフェロモンを含んだおしっこを吹きつける(スプレー行為)。
・やたらと人に甘えるようになる。
・大きな声で鳴く。
・尻尾を上げている時間が多くなる。
そのほかにも独特のニオイを発する、食欲がなくなるなどの症状も確認できます。
またこのような行動や症状は、まだ性成熟を迎えていない子猫や避妊手術を受けたメス猫にはほとんど見られません。
オス猫の行動
発情期のメス猫の鳴き声に応えるように鳴き声を発します。
そしてフェロモンに反応して集まった複数のオス猫が、メス猫を巡って奪い合いをします。
成熟したオス猫の体の特徴
成熟したオス猫は、顔つきが変わってえらが張るような感じになり、陰茎には小さな棘が生えてきます。
また鳴き声が大きくなり、異性へのアピールを始めるようになります。
猫の交尾が始まる年齢
オスとメスでは交尾をする年齢に差があり、メスよりオスの方が少し早く始まります。
オス猫の場合
オス猫の陰茎は3ヶ月頃から小さな棘が生え始めて発達します。そして4ヶ月頃にはほかの猫とじゃれ合って遊ぶ中で、マウンティングや腰を振るような動き(ペルヴィックスラスト)などを学びます。
メス猫の場合
メス猫が交尾をし始める年齢はオス猫よりも少し遅く、無事に妊娠、出産を行うための体の成熟が成される生後9ヶ月頃です。
しかし成長度合いによっても発情期のタイミングは異なります。中には体の成熟が早く、生後4ヶ月ほどで初めて発情期を迎える個体もいます。
猫の交尾相手の選び方
猫は強くて丈夫な体を持つ自分の子孫を残すため、本能で近親相姦を避けようとします。
オス猫の場合
オス猫は発情を迎えると自分が育ったテリトリーを出て、交尾の相手を探し始めます。
発情期のメス猫を複数のオス猫が奪い合うため、交尾の候補となるオス猫は身体が大きくて力の強いタイプが有利となります。交尾をしたことがないオス猫は経験豊富なメス猫に魅力を感じるので、年齢が若い個体よりも出産経験のある成熟した個体を選ぶ傾向にあります。
メス猫の場合
交尾の決定権は、メス猫にあります。
力が強くて身体の大きいオス猫であろうと、メスが認めなければ交尾は成立しません。
猫の交尾前に見られる行動
交尾のパートナー選びの際にはオス猫、メス猫それぞれに以下のような行動が見られます。
オス猫の場合
発情中のメス猫に強い興味を持ちます。
メス猫が発するフェロモンのニオイに惹かれたオス猫は、メス猫を怒らせないように背後からそっと距離を詰め、メス猫の外陰部のニオイを嗅ぎます。
その際、スプレー行為(ニオイの強い尿を出してマーキングを行う)やフレーメン反応(笑っているかのように唇をゆがませる表情)をみせることもありますよ。
メス猫に気に入られようとグルーミングを行うオス猫も多いですね。
メス猫の場合
メス猫は発情すると神経質になります。気に入らないオス猫には爪を出して威嚇をしたり、デリカシーのないオス猫は猫パンチをして追い払います。
オス猫のスプレー行為で排出された尿の匂いを嗅ぐことでメス猫の発情はさらに高められますが、交尾の決定権をメス猫が握っていることは変わりません。
猫の交尾がはじまるまでの流れ
猫は一度の出産でたくさんの子猫を産みます。猫の交尾の仕組みがたくさんの出産を可能にしています。
基本的に、奪い合いに勝利しメス猫の一番近くを陣取った優位なオス猫が交尾に挑みます。
メス猫に少しづつ近づく
オス猫は、発情のサインを出しているメス猫の神経を逆なでしないように細心の注意を払いながら近づき様子を伺います。
急に近づきすぎるとデリカシーのない行動とみなされ、メス猫が怒って逃げてることがあります。
メス猫にグルーミングをする
すぐそばに近づいてもメス猫が逃げなかったら第一関門クリアです。
次はメス猫が攻撃心を起こさないようにご機嫌取りのグルーミングを行います。ただ、しつこくしすぎるとメス猫の機嫌を損ねる可能性もあります。
グルーミングでメス猫がその気になったら、腹ばいでお尻を高く上げ、尻尾を左右どちらかに避けるロードシスという交尾を誘う体勢になります。
この段階でも、オス猫の行動に不安を感じるとメス猫は急に逃げてしまいます。
メス猫の陰部の匂いを嗅ぐ
オス猫はメス猫の陰部(尿)のニオイを嗅いで受胎が可能かをチェックします。
メス猫の発情期は長くて2週間続きます。そのシーズンのオス猫たちは、メス猫を巡り24時間体制でバトルを繰り広げ、求愛をし続けます。
交尾のチャンスを得るまでに、少なくても数時間〜数日間の時間を必要とします。
交尾をする
メス猫が逃げずに受け入れ体勢に入ると、オス猫は本格的な交尾体制に入ります。
交尾の最中にメス猫が攻撃をしてこないように首の後ろを噛み、抑え込んでから馬乗りになります。
メス猫のお尻の上にまたがったら後ろ足を足踏みして位置を決めてペニスを膣に挿入し、腰を数回スラスト(ピストン)して交尾を行います。
交尾自体はほんの2〜3秒程度で終わります。その間も首筋は噛んだままです。
猫の交尾後の行動
猫は交尾を行うことにより排卵が起こる交尾排卵動物です。
射精の直後
射精が終わるとオス猫はペニスを引き抜きます。この際、陰茎にある小さな棘がメス猫の膣内を引っ掻くようにして刺激を与えます。その刺激により排卵が促されます。
しかしこの棘の刺激はかなり痛みを伴うため、メス猫は甲高い鳴き声をあげます。またオス猫は攻撃をされる恐れがあるので、ペニスを引き抜くと同時に急いで体を離しメス猫の側から遠ざかります。
交尾後のメス猫の首に傷がついているのは、交尾時にメス猫が逃げないようにオス猫が噛みついて抑え込んだ痕である可能性が高いです。
メス猫は交尾が終わるとゴロゴロと転がったり、生殖器周辺を舐めて綺麗にしたりします。
交尾を繰り返す
交尾後落ち着くとオス猫はメス猫に寄り添い、またグルーミングを行って次の交尾に備えます。
そして、自然交尾の場合はこうした行動が6〜7回程度繰り返し行われます。
産まれる子猫たちの毛色が異なる理由
産まれてくる子猫の被毛の色が個体によって違う場合があるのは、メス猫が特定のオス猫だけでなく複数のオス猫と交尾を行ったことが理由にあげられます。
通常は1匹のオス猫をパートナーとして交尾を行いますが、メス猫は何度も交尾を行ううちにオス猫に対しての許容範囲が広くなり、数日間は自分から積極的にオス猫を誘うようになります。
それまで交尾のチャンスのなかったオス猫も、近くで待機をしていれば交尾のチャンスが巡ってくるかもしれません。
メス猫は一度の発情で複数のオス猫と交尾をして、排卵し妊娠をするのです。
オス猫の去勢手術が推奨される理由
オス猫は種を残そうとする交尾欲求からメス猫を巡り熾烈な戦いを繰り広げるため、発情シーズンが終わる頃には疲労し、痩せこけ、体が傷だらけになっていることも少なくありません。
オス猫に白血病やエイズなどの感染症が多いのは、ほとんどが発情期のバトルが原因といわれます。
健康で長生きをさせるためにも去勢手術を行い、過度な争いを避けることが推奨されています。
猫の交尾で妊娠する確率
猫の発情期は約2週間ですが、その間に何度も交尾を繰り返すため妊娠の確率はほぼ100%といえます。
1回の交尾で妊娠をしなくとも、何回も交尾を行うことにより妊娠の確率が上がります。
猫の交尾で飼い主が注意するポイント
人間の手で交尾をさせる場合に注意すべきポイントを紹介します。
飼い猫を安易に交尾させない
交尾をさせる前に、産まれてきた子猫たちすべての命を生涯守っていけるのかをしっかりと考える必要があります。
もし繁殖を望む場合は、猫同士の相性を尊重しながら無理強いをせず交尾を行わせることが重要です。
交尾しやすい環境作りを行う
メス猫は交尾の24〜50時間以内に排卵します。
妊娠の可能性が最も高くなる、発情開始から3〜4日目に交尾をしやすい環境を整えてあげると良いですね。
静かに生活できる場所を用意する
人間の手によって交尾をさせる場合、まず大切になるのはメス猫がリラックスして過ごすことのできる環境を用意することです。
交尾をさせるオス猫とすぐに接触をさせることは避け、まずはケージに入れてケージ越しに対面をさせます。その際には、メス猫がストレスを感じないように動き回れるスペースのあるケージを用意することが好ましいです。
ケージ越しでオス猫を威嚇しなくなったら、メス猫をケージから出してオス猫の縄張りで過ごさせます。
猫の交尾はお互いの相性が合わないと行われないので、人間の手で無理やり交配をさせてはいけません。
交尾は数回行う
最初の交尾が無事に済んだら、オス猫とメス猫を別々の場所で休ませて体力が回復するのを待ちます。そして体力が回復したら再度交尾を行わせます。
妊娠の確率を高めたい場合は、3回程度交尾をさせることが理想です。
猫の気持ちに寄り添うことが大切
猫の発情は子孫を残すための本能ですが、普段とは違う行動をとることが多いため戸惑う飼い主さんも多いですよね。
発情期の猫はとても神経質になっているため、ちょっとしたことがストレスになりかねません。発情の仕組みを理解し、猫の気持ちに寄り添ってあげることが大切です。
また大切な愛猫と末長く生活を共にしていくためにも、繁殖を望まない場合は去勢や避妊を行うことも有効的な方法といえます。