スパニッシュマスティフはスペイン原産の家畜護衛犬で、最も体が大きな犬種です。スペインでは国犬に指定されていて高い人気を誇っていますが、スペイン国外では飼育頭数の少ないレアな大型犬種です。この記事ではスパニッシュマスティフの歴史、性格、特徴、しつけ、寿命や病気、飼い方についてご紹介します。
目次
スパニッシュマスティフの歴史や特徴は?
歴史
紀元前二千年頃、フェニキア商人がインド方面かシリアからイベリア半島に連れてきた、モロッサーという古代犬が祖先と考えられています。スペインのエストレマデューラとカスティージャ・ラ・マンチャという地方を故郷とし、エストレマデューラまたはラ・マンチャという別称で呼ばれています。大きな体格を活かして、広い農場などでオオカミや泥棒から牧畜を守る護衛犬として働いていました。現在ではコンパニオンドッグとして飼育されることが多くなりましたが、牧畜犬やワイン農園や屋敷の番犬として活躍している犬もいます。
出典:JKC「スパニッシュ・マスティフ」、藤田りか子 著/リネー・ヴィレス 編集協力「最新 世界の犬種大図鑑」
特徴
体高 72~78cm
体重 52~100kg
被毛 スムースな手触り
被毛カラー ホワイト、ブラック、ベージュ他多様/p>
スパニッシュマスティフは体高72~78cm、体重がオスで90~100kg、メスで52~77kg前後の超大型犬です。オスの中には体重が120kgに達する個体もいるようです。
見た目
スパニッシュマスティフは、どっしりとした筋肉質な体型をしており、筋肉質で引き締まった骨格と知性を感じさせる表情には迫力があります。「デューラップ」と呼ばれる首元のたゆみと、よく響くしわがれた低い吠え声が特徴的です。
被毛
密集した被毛はスムースな手触りで、長さはミディアムです。被毛カラー、イエローやレッド、ブラックなどの単色カラーが容認されています。
成長特徴
成長過程にも特徴があり、子犬期の成長が早く生後6~8ヶ月で体重が45kgほどに達しますが、成犬としての体格が完成するまでには4~5年かかります。
スパニッシュマスティフの性格は?
性格
温厚
勇敢
愛情深い
従順
警戒心がある
温厚で愛情深い
スパニッシュマスティフは温厚で優しく、飼い主家族に従順で愛情深い性格をしています。子犬の頃からしつけをしっかり行えば、小さい子供や他の小動物とも十分仲良くなってくれますよ。
勇敢で番犬向き
飼い主を守りたいという気持ちから、見知らぬ人や動物に対しては警戒心を露わにしたり吠えたりします。家族の危機に勇敢に立ち向かう一面も持ち合わせていますので、番犬にも向いている犬種です。吠え声は太くて低く、よく響きわたるのでマンションなど集合住宅での飼育には不向きといえます。
スパニッシュマスティフの寿命や病気は?
寿命
10~11年前後
スパニッシュマスティフの平均寿命は10~11年前後です。まれに14年程度生きる個体もいるので大型犬としては長寿の犬種です。
病気
股関節形成不全
汎骨炎
心臓疾患
眼瞼内反
胃捻転
スパニッシュマスティフが気を付けたい病気は「股関節形成不全」「汎骨炎」「心臓疾患」「眼瞼内反」「胃捻転」などです。
股関節形成不全
「股関節形成不全」は、股関節の骨の形が変形してしまう関節の病気です。変形した箇所が嚙み合わず炎症を起こすため、痛みで動くのを嫌がるようになります。原因は遺伝的なものと、肥満や激しめの運動があげられます。大型犬種によくみられる病気であり、ほとんどが親からの遺伝性疾患ですが、肥満や成長期の激しい運動でも発症のリスクがあります。運動と食事のバランスを気にかけ、時期に見合った運動量を調節してあげてください。歩行に違和感を感じたら病院へ行きましょう。
汎骨炎
「汎骨炎」は骨の炎症のことであり、中型犬や大型犬の成長途中の犬によくみられる病気です。足に発症しやすいため、歩行がふらついていたり着地を嫌がるような素振が見られたら、病院で診察してもらいましょう。
心臓疾患
「心臓疾患」は様々な原因から起こるため、日ごろから愛犬の状態をよく観察する必要があります。「咳き込むことが増えた」「元気がない」「ぐったりしている」といった普段とは違う様子が見られたら、すぐに病院へ。
眼瞼内反
「眼瞼内反」は眼のまぶたが内側に入りこむことで炎症を起こし続けます。まぶたの構造上の問題や、他の眼病手術が原因で発症する可能性があります。「涙が止まらまない」「眼が白く濁ってきた」といった症状が見られたら、病院へ行ってくださいね。
胃捻転
何かしらの原因で胃がねじれてしまう病気です。ねじれたことで他の臓器が圧迫され血液の循環がうまくいかず、結果命を落とす場合もあります。原因は、食後の急な運動や大量の水のみ、早食いなどが関係しています。遺伝的な要因も持ち合わせていますが、日ごろの生活でも発症するリスクは潜んでいます。
どの疾患も飼い主が気をつけることで発症のリスクを減らせますので、普段から愛犬の体には気を使ってあげてくださいね。
スパニッシュマスティフの飼い方は?
飼育環境
スパニッシュマスティフは飼い主家族の近くにいることに喜びを感じるので、屋内飼育がおすすめです。ただ、高温多湿な日本はマスティフ系が苦手な気候です。室温はクーラーなどで調節してあげてください。
超大型犬なので、飼育スペースは広い環境を用意してください。あまりにも狭いと、ストレスになる可能性があります。吠える声によっては近隣住民とのトラブルになる可能性がありますので、マンションや閑静な住宅街での飼育には向いていないといえます。
最低限揃えておくもの
飼育スペース・ケージ
食器類・床材
首輪やリード・おもちゃ
ドッグフードとおやつ
トイレ用品
ケア用品
動物病院
スパニッシュマスティフとの生活をより快適なものにするために、「飼育スペース・ケージ」「食器類・床材」「首輪やリード・おもちゃ」「ドッグフードとおやつ」「トイレ用品」「ケア用品」「動物病院」などの生活用品や準備を揃えておきましょう。
飼育スペース・ケージ
快適に過ごせるスペースを確保します。サークルは十分な広さを確保できるもので、犬用のベッドやケージ・クレートを用意しましょう。クレートとは箱状の家のようなものであり、犬にとって寝床となったり安心できるものになります。移動するときにも使え、病院へ連れて行くときや災害による避難の際にも活躍します。
食器類・床材
ご飯を食べる時に必要な食器を用意しましょう。水のみ用のボウルとフードのためのボウルを別々に準備してあげてください。食器類を選ぶ際は「耐久性はあるか」「滑りにくくないか」「大きさは適切か」といったことを目安に探してみてください。床材についてはすべりにくい材質のものを選び、思わぬ転倒を防ぐために用意しておくと良いでしょう。フローリングの床で滑って関節を痛めないよう、すべりづらいカーペットを敷くなどの対策をしてあげてくださいね。
首輪やリード・おもちゃ
散歩や運動をするときのために、首輪やリード・ハーネスを準備しましょう。遊ぶためのおもちゃや知育玩具なども用意しておくと、遊びを通して良好な関係性を築くことができますよ。
ドッグフードとおやつ
健康管理のため、年齢に適した高品質の犬用のドッグフードを用意しましょう。初めて犬を飼育する方は、水と餌だけで栄養が賄える「総合栄養食」と書かれたドッグフードを用意するといいですね。飼育に応じて適切な量を与えるようにしてください。絶対に必要というわけではないですが、おやつも同時に用意しておくといいですね。しつけトレーニングの際に「ご褒美」として利用できますよ。
トイレ用品
屋内で飼育する際は、排泄物を処理するための犬用のトイレトレーを用意します。また、トイレトレーニングのために新聞紙やトレーニングパッドも役立ちますので、一緒に揃えておくといいですね。
ケア用品
健康と衛生を保つために、犬用のシャンプーやブラシ、爪切り、歯磨きセットなどのケア用品を用意します。
動物病院
何かあった際や健康管理のために、かかりつけの動物病院も見つけておくと安心です。獣医師の診察や予防接種、必要な薬やサプリメントなどを考慮し予算を立てておくのもいいですね。
お手入れ
被毛ケア
シャンプー
耳掃除
歯磨き
爪切り
スパニッシュマスティフとの生活をする上で、日々のお手入れは大切です。「被毛ケア」「シャンプー」「耳掃除」「歯磨き」「爪切り」などを取り入れて清潔を保つようにしましょう。
被毛ケア
被毛は定期的にブラッシングすることが重要です。毛の絡まりや抜け毛を防ぎ、清潔で健康な被毛を保つことができますよ。被毛の手入れは週に1~2回のブラッシングで十分ですが、換毛期は抜け毛が増えるので丁寧にブラッシングをして皮膚病をケアします。
シャンプー
適切な犬用シャンプーを使用し、毛並みや肌に合わせた温度のお湯で洗います。シャンプーは月に1回を目安に行います。頻度は個体や被毛の状態により異なるため、獣医師のアドバイスを参考にするようにしてください。
耳掃除
耳は定期的にチェックしましょう。スパニッシュマスティフのような垂れ耳の場合は、耳掃除も定期的の行いましょう。見える範囲で汚れを取り除いてあげてください。垂れ耳は通気性が悪いため、耳の中が炎症している場合は悪化しやすくなります。「耳垢が増えた」「耳から悪臭がする」といった様子が見られるようであれば、病院で診てもらってくださいね。
歯磨き
犬の歯の健康は全体的な健康にも関わるため、定期的な歯磨きが必要になります。週に2~3回歯磨きをしてあげると、歯周病対策になりますよ。犬用の歯ブラシで、歯垢・歯石を取り除いてあげてください。歯ブラシが苦手な方は、歯磨き用のおもちゃやパウダー状の食事に混ぜるケア用品も販売されていますので、ぜひ取り入れてみてくださいね。
爪切り
犬の爪は適度な長さに保つ必要があります。必要に応じて爪切りを使用し、適切な長さに切り揃えましょう。
スパニッシュマスティフの散歩やしつけは?
散歩・運動
運動は毎日2回、1時間程度の散歩に加え、十分な広さを確保した場所で自由運動をさせてあげます。
フリスビー遊びやフェッチ遊び、ジョギング、バイクに並走して走らせるなどの激しい運動を組み込むのがおすすめですよ。生後6~10ヶ月の間に過剰な運動をさせると骨や筋肉に影響が出て股関節形成不全になりやすいので注意してくださいね。
「熱中症」にも注意して、夏場の散歩はなるべく日陰を歩いたり時間帯を気にしてくださいね。
しつけ
スパニッシュマスティフは自主性と独立心が強く、頑固でマイペースな一面があります。しつけは断固とした態度をとれる経験者であれば大丈夫ですが、全くの初心者である場合は難しい犬種かもしれません。
自己判断能力に優れている賢い犬種なので、主従関係を教えることが特に大切です。飼い主をリーダーとして信頼させてあげてくださいね。
子犬期からいろいろな人、環境、犬と接する機会を作り、社会性を身につけさせると吠え癖の対策になります。しつけは「ポジティブレインフォースメント」(好ましい行動を褒め、繰り返させる訓練法) や報酬ベースのトレーニング法がおすすめです。
スパニッシュマスティフにおすすめのドッグフードは?
総合栄養食と一般食
ドッグフードをメインで与えたい場合は、「総合栄養食」と表示されているドッグフードを選びましょう。これは水と一緒に与えるだけで、健康が維持できるドッグフードのことです。選ぶ際は原材料を必ず確認しましょう。主原料が「肉類」であることが望ましいですよ。
手作り食をメインで与えたい場合は、「一般食」と表示されているドッグフードがおすすめです。いわば「おかず」のようなものであり、トッピングとして利用することで手軽に栄養を追加することができます。
食事量
ドッグフードの場合は裏面に記載されている量を与えるようにしましょう。ただ、体重との換算表は愛犬が「理想体型」であることが前提ですので、太っている子や痩せている子の量は調整が必要になります。子犬やシニア犬の場合も同様で、体形や体質を確認を確認しながら量の調整を行ってくださいね。
ごはんを食べない・・・どうすればいい?
ご飯を食べない場合はいくつかの理由があり、主に「好みの味ではない・食べにくい」「体調不良や季節による食欲の低下」「食器や環境が気に入らない」「ストレスが溜まっている」「病気」などが挙げられます。
この場合は、以下の方法を取り入れてみてくださいね。
トッピングをしてみる
まずはドッグフードにササミなどをトッピングして与えてみて、食欲が改善されるかを確認してみてください。新鮮な生肉を原材料に利用しているドッグフードに切り替えるのも手ですよ。
フードを食べやすくする
食べづらさが原因の場合は、飼い主さんがひと手間加えてあげましょう。ドライフードであれば、ぬるま湯でふやかして香りを立たせるのも手です。ニオイで食欲を刺激することができます。ウェットタイプとドライタイプを組み合わせれば嗜好性が高まり、また水分も一緒に摂取することができます。
食器や環境を変える
食べやすい食器に変更したり、食事する場所を変えてみるといいかもしれません。ストレスを抱えている場合もあるので、遊びや散歩の時間を増やして発散させるのもいいですね。
動物病院で診てもらう
食べない原因が病気の可能性もあります。食べたくても、食べられないのかもしれません。「好きなおやつも食べない」「ぐったりしている」「元気がない」といった様子が見られるようであれば、かかりつけの動物病院で診てもらいましょう。
スパニッシュマスティフを迎え入れる方法は?
スパニッシュマスティフを迎え入れる場合、主に「ブリーダー」「里親制度」を利用が挙げられます。ペットショップで出会うことは難しい犬種ですので、この2つを利用してみてくださいね。
どちらにもメリットとデメリットがありますので、自分に合った方を選択してください。
心優しい大型犬
いかがでしたでしょうか。
スパニッシュマスティフは体重が100kgを超えることもある超大型犬ですが、とても温厚な性格の持ち主です。しかし大きな体ゆえに動物病院やトリミングサロンで断られることがあるなど、他の犬種よりも飼育難易度が高いです。事前にお住まいの地域の情報を集め、住まい環境や経済力を考慮したうえで検討してくださいね。
しつけさえうまく出来れば、飼い主家族にとって頼もしい伴侶になってくれますよ。とはいえ、初心者にはしつけをするのは難しいかもしれませんので、プロの手を借りるようにしてくださいね。