アメリカンアキタは秋田犬と同じ起源を持っていますが、終戦後にアメリカで秋田犬とは別の道を歩み、グレートジャパニーズドッグとも呼ばれています。
素朴さの中にも高い品位と威厳を感じさせる外見が魅力の犬です。
この記事はアメリカンアキタの歴史、性格や特徴、しつけ、寿命や病気、飼い方についてまとめました。
目次
アメリカンアキタの歴史と特徴は?
歴史
1937年に来日したヘレンケラーは、秋田を訪れたときに2頭の秋田犬を譲り受けてアメリカへ持ち帰りました。2頭はアメリカンアキタの繁殖に直接関係してはいませんが、ヘレンケラーが気に入った犬ということでアメリカで話題になりました。
第二次大戦後にアメリカの進駐兵が秋田犬の出羽系をアメリカに持ち帰り、シェパードなどと交雑をさせました。秋田犬とは違う独自の進化を遂げ、アメリカンアキタという別犬種が誕生しました。
賢く、異環境への適応能力を持つアメリカンアキタはアメリカのブリーダーたちを魅了し、その数を増やしていったのです。
特徴
アメリカンアキタは体長61~71cm、体重27~59kg前後で、超大型犬に分類されます。
見た目
アメリカンアキタはがっしりとした骨太で均整が取れた体型で、三角形の広い頭部、深いマズル、小さな目、前傾した直立の耳、背上に巻くか脇腹に垂れる尾が特徴です。秋田犬に比べるとやや大きめの姿をしており、顔つきもやや異なりシェパードに似た顔をしています。
被毛
被毛は厚く密なアンダーコートと、粗く硬い短めで直毛のアウターコートのダブルコートです。被毛カラーは様々な色が認められており、顔のブラックマスクも許されています。
アメリカンアキタの性格は?
性格
優しい
人懐っこい
忠実
勇敢
忠実で勇敢
アメリカンアキタは飼い主にとても忠実で献身的な優しい性格をしています。飼い主に忠実であり、その家族を守ろうとする気持ちが強いため、番犬としても優れた能力を発揮します。縄張り意識を持ち、外敵には勇敢に立ち向かいます。子犬の頃から家族の一員だとしつけることで、子どもとも仲良くやっていけます。
活発でフレンドリー
アメリカンアキタは、秋田犬に比べて家族以外にもフレンドリーな傾向にあります。そのため、他の犬や人間とも仲良く関わることができます。子犬の頃から多くの人間と動物に触れ合う機会を作りましょう。また、猟犬であったことから豊富な運動量を必要とします。運動不足はストレスを溜めてしまうので、十分な運動時間を確保できる人に向いている犬種です。
アメリカンアキタの散歩やしつけは?
散歩・運動
アメリカンアキタは豊富な運動量が必要です。散歩は毎日60分程度を朝夕の2回するのがおすすめです。長い距離の散歩を好むので、ジョギングも交ぜながらの散歩をしてください。ドッグランを利用してみてもいいでしょう。
しつけ
アメリカンアキタは、初心者の方にはしつけが難しい犬種です。
対応力や忍耐力があるので訓練などへの反応は良いのですが、毅然とした態度でしつけを行う必要があります。体重が50kgを超えることもある犬種なので、子犬の頃のしつけに失敗すると手に負えない猛犬になってしまいます。
子犬の頃から少し頑固な一面があるので積極的にコミュニケーションを図り、飼い主を信頼させるのがポイントです。
できるだけ遊びや生活の中で飼い主との主従関係をしつけ、服従訓練を徹底してください。日々愛情を持って接し続けることで、愛犬も徐々に信頼してくれるはずです。
信頼関係が結べれば、これほど心強いパートナーはいませんよ。
褒めることを重点的に
しつけの際は、叱ることよりも褒めることを重点的に行いましょう。成功できた時はご褒美を与えてもいいですね。おやつを与えたり、一緒に遊んだりすることもご褒美になりますよ。
アメリカンアキタの寿命や病気は?
寿命
10~12年前後
アメリカンアキタの平均寿命は10~12年前後です。大型犬としては平均的と言えます。
病気
甲状腺機能低下症
股関節形成不全
膝蓋骨脱臼
脂腺炎
アメリカンアキタは「甲状腺機能低下症」「股関節形成不全」「膝蓋骨脱臼」「脂腺炎」などの病気に注意しましょう。
甲状腺機能低下症
「甲状腺機能低下症」は、全身の代謝を上げる甲状腺ホルモンの分泌が少なくなる病気であり、元気が無かったり皮膚に異常が見られたりします。併発する「クッシング症候群」や免疫疾患である「天疱瘡(てんぽうそう)」や「原田病」にも注意が必要です。
股関節形成不全
「股関節形成不全」とは股関節の骨の形が変形してしまう関節病の1つです。犬の中でも特に大型犬に多い病気と言われています。変形した箇所が嚙み合わず炎症を起こし、痛みで動くのを嫌がるようになります。関節疾患は先天性のものと、発育期の過剰な運動や肥満などの後天性が原因です。歩行に異常がみられたら早めに病院で診察を受けてください。
愛玩動物看護師 渡邉鈴子さん
股関節形成不全では、うさぎ跳びのような歩き方やモンローウォークと呼ばれる腰を左右に振る歩き方をします。このような歩き方をしていたら動物病院を受診しましょう。
膝蓋骨脱臼
「膝蓋骨脱臼」とは膝のお皿が、正常な位置から脱臼してしまう関節病の1つです。原因は先天的と外傷的の2つからな要因から発症します。肥満になると発症する確率が上がるので、体重管理や栄養のある食事が重要になります。
脂腺炎
「脂腺炎」とは、秋田犬にみられる皮膚疾患です。「毛が油状になる」「フケが出る」「下毛が大量に抜ける」などの症状が出たら疑いがあります。原因不明で進行性なので完治することは難しいですが、初期の段階であれば進行を抑えてくれる薬があります。遅れるとシャンプー療法を中心に対症療法をするしかありませんので、早期に病院へ連れてあげてください。
アメリカンアキタの飼い方は?
飼育環境
アメリカンアキタはダブルコートで被毛が多いため、温度管理ができる屋内飼育が向いています。ただし、体が非常に大きい超大型犬なので、飼育スペースは十分な広さが必要です。
狭い環境での生活はストレスの原因となり、攻撃的になる場合もあります。飼育前に環境がしっかり整えられるかを考えるようにしてください。
体が大きくなると関節に負担がかかりやすくなりますので、飼育環境は1階に作ることをオススメします。
飼育するために準備しておくもの
飼育スペース・ケージ
食器類・床材
首輪やリード・おもちゃ
ドッグフードとおやつ
トイレ用品
ケア用品
動物病院
アメリカンアキタとの生活をより快適なものにするために、「飼育スペース・ケージ」「食器類・床材」「首輪やリード・おもちゃ」「ドッグフードとおやつ」「トイレ用品」「ケア用品」「動物病院」などの生活用品や準備を揃えておきましょう。
飼育スペース・ケージ
快適に過ごせるスペースを確保します。サークルは十分な広さを確保できるもので、犬用のベッドやケージ・クレートを用意しましょう。クレートとは箱状の家のようなものであり、犬にとって寝床となったり安心できるものになります。移動するときにも使え、病院へ連れて行くときや災害による避難の際にも活躍します。
愛玩動物看護師 渡邉鈴子さん
クレートは普段から慣れさせておくことで、スムーズに動物病院へ連れていくことが可能です。クレートを動物病院へ行くときにしか使用していないと、クレート=動物病院という認識になってしまいます。普段から使用することで防ぐことが可能です。
食器類・床材
ご飯を食べる時に必要な食器を用意しましょう。水のみ用のボウルとフードのためのボウルを別々に準備してあげてください。食器類を選ぶ際は「耐久性はあるか」「滑りにくくないか」「大きさは適切か」といったことを目安に探してみてください。床材についてはすべりにくい材質のものを選び、思わぬ転倒を防ぐために用意しておくと良いでしょう。フローリングの床で滑って関節を痛めないよう、すべりづらいカーペットを敷くなどの対策をしてあげてくださいね。
首輪やリード・おもちゃ
散歩や運動をするときのために、首輪やリード・ハーネスを準備しましょう。遊ぶためのおもちゃや知育玩具なども用意しておくと、遊びを通して良好な関係性を築くことができますよ。
ドッグフードとおやつ
健康管理のため、年齢に適した高品質の犬用のドッグフードを用意しましょう。初めて犬を飼育する方は、水と餌だけで栄養が賄える「総合栄養食」と書かれたドッグフードを用意するといいですね。飼育に応じて適切な量を与えるようにしてください。絶対に必要というわけではないですが、おやつも同時に用意しておくといいですね。しつけトレーニングの際に「ご褒美」として利用できますよ。
トイレ用品
屋内で飼育する際は、排泄物を処理するための犬用のトイレトレーを用意します。また、トイレトレーニングのために新聞紙やトレーニングパッドも役立ちますので、一緒に揃えておくといいですね。
ケア用品
健康と衛生を保つために、犬用のシャンプーやブラシ、爪切り、歯磨きセットなどのケア用品を用意します。
動物病院
何かあった際や健康管理のために、かかりつけの動物病院も見つけておくと安心です。獣医師の診察や予防接種、必要な薬やサプリメントなどを考慮し予算を立てておくのもいいですね。
お手入れ
被毛ケア
シャンプー
耳掃除
歯磨き
爪切り
アメリカンアキタとの生活をする上で、日々のお手入れは大切です。「被毛ケア」「シャンプー」「耳掃除」「歯磨き」「爪切り」などを取り入れて清潔を保つようにしましょう。
被毛ケア
被毛の手入れを怠ると皮膚病の原因になることもあるので、スキンシップも兼ねて毎日ブラッシングしてあげてください。ブラッシングをして表面に浮いてきたフケや埃を蒸しタオルなどで拭き取ってあげます。換毛期には大量の毛が抜けるので、いつもよりも丁寧にムダ毛や死に毛を取り除いてあげてくださいね。
シャンプー
適切な犬用シャンプーを使用し、毛並みや肌に合わせた温度のお湯で洗います。シャンプーは月に1回ほどで十分です。頻度は個体や被毛の状態により異なるため、獣医師のアドバイスを参考にするようにしてください。
耳掃除
耳は定期的にチェックしましょう。見える範囲でいいので耳専用のクリーナーを使用して掃除をしてあげてください。「耳垢が増えた」「悪臭がする」といった普段と違う様子の場合は病院で見てもらいましょう。
歯磨き
犬の歯の健康は全体的な健康にも関わるため、定期的な歯磨きが必要になります。犬用の歯ブラシや、歯垢・歯石を取り除いてあげてください。歯ブラシが苦手な方は、歯磨き用のおもちゃやパウダー状の食事に混ぜるケア用品も販売されていますので、ぜひ取り入れてみてくださいね。
爪切り
犬の爪は適度な長さに保つ必要があります。必要に応じて爪切りを使用し、適切な長さに切り揃えましょう。
愛玩動物看護師 渡邉鈴子さん
日々のお手入れが自宅で行うのが難しい場合は動物病院やトリミングサロンなどにお任せすることも視野にいれるといいでしょう。
アメリカンアキタにおすすめのドッグフードは?
総合栄養食と一般食
ドッグフードをメインで与えたい場合は、「総合栄養食」と表示されているドッグフードを選びましょう。これは水と一緒に与えるだけで、健康が維持できるドッグフードのことです。選ぶ際は原材料を必ず確認しましょう。主原料が「肉類」であることが望ましいですよ。
手作り食をメインで与えたい場合は、「一般食」と表示されているドッグフードがおすすめです。いわば「おかず」のようなものであり、トッピングとして利用することで手軽に栄養を追加することができます。
食事量
ドッグフードの場合は裏面に記載されている量を与えるようにしましょう。ただ、体重との換算表は愛犬が「理想体型」であることが前提ですので、太っている子や痩せている子の量は調整が必要になります。
ごはんを食べない・・・どうすればいい?
ご飯を食べない場合はいくつかの理由があり、主に「好みの味ではない・食べにくい」「体調不良や季節による食欲の低下」「食器や環境が気に入らない」「ストレスが溜まっている」「病気」などが挙げられます。
この場合は、以下の方法を取り入れてみてくださいね。
トッピングをしてみる
まずはドッグフードにササミなどをトッピングして与えてみて、食欲が改善されるかを確認してみてください。新鮮な生肉を原材料に利用しているドッグフードに切り替えるのも手ですよ。
フードを食べやすくする
食べづらさが原因の場合は、飼い主さんがひと手間加えてあげましょう。ドライフードであれば、ぬるま湯でふやかして香りを立たせるのも手です。ニオイで食欲を刺激することができます。
また、粒が大きいようであれば砕いてあげるのもいいでしょう。ウェットタイプとドライタイプを組み合わせれば嗜好性が高まり、また水分も一緒に摂取することができます。
食器や環境を変える
食べやすい食器に変更したり、食事する場所を変えてみるといいかもしれません。ストレスを抱えている場合もあるので、遊びや散歩の時間を増やして発散させるのもいいですね。
動物病院で診てもらう
食べない原因が病気の可能性もあります。食べたくても、食べられないのかもしれません。「好きなおやつも食べない」「ぐったりしている」「元気がない」といった様子が見られるようであれば、かかりつけの動物病院で診てもらいましょう。
日本では希少?アメリカンアキタを迎え入れる方法は?
迎え入れる方法としては「ブリーダー」「里親」が挙げられますが、日本にはブリーダーがいないため海外からの輸入になります。
また、ジャパンケネルクラブの犬種別犬籍登録数によれば、2023年には12頭の登録がありました。日本では希少な犬種と言えますね。
中途半端な覚悟では飼えない犬
アメリカンアキタの飼育は想像以上に大変かもしれません。食事、運動、散歩、手入れなど、毎日欠かせない事が多いです。
ドッグフードやおやつなどの食費だけでも月1万円程度必要になります。加えて力強い大型犬ゆえのしつけの難しさがあります。
飼育は決して簡単ではありませんが、信頼関係を築けた時の喜びは大きいですよね。アメリカンアキタとの生活は、日々の大変さを忘れさせてくれるほど、愛情と濃密な時間を我々に与えてくれますよ。