イングリッシュマスティフはチべタンイングリッシュマスティフを祖先としているイギリス原産の非常に古い犬種で、主に番犬や闘犬として使われていました。
今回の記事ではイングリッシュマスティフの性格や特徴、しつけ、寿命や病気、飼い方についてまとめました。
目次
イングリッシュマスティフの基本情報は?
歴史
イングリッシュマスティフの歴史は古く、紀元前700年頃のバビロンのレリーフに描かれています。馬とライオン狩りをしているイングリッシュマスティフが絵描かれているのです。過去には闘犬として活躍していたこともあります。
闘犬の歴史はローマ時代まで遡り、ユリウス・カエサルがイングランド遠征からイングリッシュマスティフを持ち帰りライオンなどと戦わせたことに始まります。中世になって、闘犬が禁止されると番犬としての役割を任されるようになり、農場を害獣から守る有能なガーディングドッグとして活躍するようになりました。現在では多くの国で闘犬が禁止されているため、より大人しく友好的に改良されほとんどがショードッグ、番犬として飼育されています。
外見の特徴
大きな頭に筋肉隆々の体つきをしていて、体高は70~76cm、体重は79~86kg前後の超大型犬に分類されます。中にはホッキョクグマほどの大きさになる個体もいるのです。
シワシワの額と離れ気味の目、太く短いマズルに垂れ耳、太く垂れた尾を持っています。
筋肉質でがっしりとした体格は、とても強そうな印象を感じますね。
被毛の特徴
被毛はダブルコートで密集したアンダーコートとやや短めで真っ直ぐな硬いアウターコートから成っています。
毛色はフォーン、ブリンドル、アプリコットなどで、顔にはブラックマスクが入っています。
イングリッシュマスティフの性格は?
温厚
物静か
忠実
警戒心が強い
忍耐強い
温厚で優しい
イングリッシュマスティフは見た目からは想像できないほど優しく、物静かでおおらかな性格をしています。主人にはとても忠実で甘えん坊ですが、見知らぬ人や物に対する警戒心は強く責任感の強さから番犬としても活躍してくれます。
勇敢で警戒心が強い
主人や家族に危機が迫ったときには勇敢に立ち向かいます。はしゃいだり感情を露わにするような行動はあまりしません。
落ち着いていて飼い主のそばに座り、指示が出るまで何時間でも待つことのできる、忍耐力の強い一面を持っています。無駄吠えもしないので、近所に迷惑をかけることもありません。主人や家族に献身的なので、子供の子守り役も務められる犬種なので、家庭犬として向いていますよ。
イングリッシュマスティフの散歩やしつけは?
散歩・運動
イングリッシュマスティフは体が大きく太りやすいため毎日の運動量もかなり必要です。1日2回、60分程の散歩に連れていってあげてください。たまに早歩きや軽いジョギングを混ぜてみてもいいですよ。
しつけ
飼い主に対して従順で聡明な犬種なので基本的にしつけやすいといわれます。
ただ、一度攻撃行動に移ると大きな体でパワフルすぎて制御できなくなります。その意味では初心者の方にはオススメできない犬種です。幼犬の頃から主従関係をしっかりと理解させ、服従訓練を徹底的にやる事が何よりも大切です。愛情と忍耐、一貫性を持たせた早期教育を心がけてくださいね。
イングリッシュマスティフの寿命や病気は?
寿命
8〜10年前後
イングリッシュマスティフの平均寿命は8〜10年前後といわれており、大型犬の中では比較的短命といえます。
病気
先天性心疾患
股関節形成不全
胃捻転
眼瞼外反症
小眼球症
イングリッシュマスティフが気をつけるべき病気は、「先天性心疾患」「股関節形成不全」「胃捻転」「眼瞼外反症」「小眼球症」などです。特に大型犬が発症しやすいといわれる「股関節形成不全」と「胃捻転」には注意が必要です。
股関節形成不全
股関節の骨の形が変形してしまう関節の病気です。犬の中でも特に大型犬に多い病気と言われています。変形した箇所が嚙み合わず炎症を起こし、股関節形成不全は生後60日の間に急激に体重が増加することで、股関節へ過度のストレスがかかりやすいからだと考えられています。歩き方に違和感を感じた場合は病院へ連れて行きましょう。また、日ごろから食事と運動で健康に気を遣うことが大切になります。
愛玩動物看護師 渡邉鈴子さん
股関節形成不全では、うさぎ跳びのような歩き方やモンローウォークと呼ばれる腰を左右に振る歩き方をします。このような歩き方をしていたら動物病院を受診しましょう。
胃捻転
何かしらの原因で胃がねじれてしまう病気です。ねじれたことで他の臓器が圧迫され、血液の循環がうまくいかず、結果命を落とす場合も。原因は、食後の急な運動や大量の水のみ、早食いなどが関係しています。胃捻転は時間の経過とともに死に至る確率がかなり高くなり、すぐに処置をしなければならない緊急性の高い病気です。「一度にたくさん食べさせるのではなく回数を増やす」「食前食後2時間は水を取らせない」「食後すぐに運動させない」など飼い主が気を付けることで発症のリスクを下げられます。イングリッシュマスティフを飼う際にはこれらを習慣にして、胃捻転にならないような飼い方をしてあげてくださいね。
眼瞼外反症
いわゆる「あっかんべー」をした状態が続き、下まぶたの粘膜がむき出しになってしまう目の症状です。目やにが増えたり充血するなどの様子が見られるので、比較的早く症状に気付くでしょう。イングリッシュマスティフのような顔の皮膚が垂れている犬種に多く見られます。
「先天性心疾患」は生まれつき心臓が異常な状態であったり、「小眼球症」などの目の障がいである場合は防ぐことができませんので、早期発見早期治療のためにも生まれてから必ず検診を受けましょう。
イングリッシュマスティフの飼育環境やお手入れは?
飼育環境
イングリッシュマスティフは家族と共に過ごす事が大好きで、暑さに弱い犬種なので室内で飼うのがオススメです。
体が大きいためなるべく広々とした広さの部屋で飼育した方がストレスを溜めずに穏やかに過ごせます。
階段の上り下りは歳をとると大変になりますので、飼育スペースは1階で作った方がいいでしょう。
最低限揃えておくもの
飼育スペース・ケージ
食器類・床材
首輪やリード・おもちゃ
ドッグフードとおやつ
トイレ用品
ケア用品
動物病院
イングリッシュマスティフとの生活をより快適なものにするために、「飼育スペース・ケージ」「食器類・床材」「首輪やリード・おもちゃ」「ドッグフードとおやつ」「トイレ用品」「ケア用品」「動物病院」などの生活用品や準備を揃えておきましょう。
飼育スペース・ケージ
快適に過ごせるスペースを確保します。サークルは十分な広さを確保できるもので、犬用のベッドやケージ・クレートを用意しましょう。クレートとは箱状の家のようなものであり、犬にとって寝床となったり安心できるものになります。移動するときにも使え、病院へ連れて行くときや災害による避難の際にも活躍します。
愛玩動物看護師 渡邉鈴子さん
クレートは普段から慣れさせておくことで、スムーズに動物病院へ連れていくことが可能です。クレートを動物病院へ行くときにしか使用していないと、クレート=動物病院という認識になってしまいます。普段から使用することで防ぐことが可能です。
食器類・床材
ご飯を食べる時に必要な食器を用意しましょう。水のみ用のボウルとフードのためのボウルを別々に準備してあげてください。食器類を選ぶ際は「耐久性はあるか」「滑りにくくないか」「大きさは適切か」といったことを目安に探してみてください。床材についてはすべりにくい材質のものを選び、思わぬ転倒を防ぐために用意しておくと良いでしょう。フローリングの床で滑って関節を痛めないよう、すべりづらいカーペットを敷くなどの対策をしてあげてくださいね。
首輪やリード・おもちゃ
散歩や運動をするときのために、首輪やリード・ハーネスを準備しましょう。遊ぶためのおもちゃや知育玩具なども用意しておくと、遊びを通して良好な関係性を築くことができますよ。
ドッグフードとおやつ
健康管理のため、年齢に適した高品質の犬用のドッグフードを用意しましょう。初めて犬を飼育する方は、水と餌だけで栄養が賄える「総合栄養食」と書かれたドッグフードを用意するといいですね。飼育に応じて適切な量を与えるようにしてください。絶対に必要というわけではないですが、おやつも同時に用意しておくといいですね。しつけトレーニングの際に「ご褒美」として利用できますよ。
トイレ用品
屋内で飼育する際は、排泄物を処理するための犬用のトイレトレーを用意します。また、トイレトレーニングのために新聞紙やトレーニングパッドも役立ちますので、一緒に揃えておくといいですね。
ケア用品
健康と衛生を保つために、犬用のシャンプーやブラシ、爪切り、歯磨きセットなどのケア用品を用意します。
動物病院
何かあった際や健康管理のために、かかりつけの動物病院も見つけておくと安心です。獣医師の診察や予防接種、必要な薬やサプリメントなどを考慮し予算を立てておくのもいいですね。
お手入れ
被毛ケア
シャンプー
耳掃除
歯磨き
爪切り
イングリッシュマスティフとの生活をする上で、日々のお手入れは大切です。「被毛ケア」「シャンプー」「耳掃除」「歯磨き」「爪切り」などを取り入れて清潔を保つようにしましょう。
被毛ケア
被毛は定期的にブラッシングすることが重要です。毛の絡まりや抜け毛を防ぎ、清潔で健康な被毛を保つことができますよ。被毛の手入れは、運動後の獣毛ブラシを使ったブラッシングを行い、換毛期には念入りにブラッシングすれば充分です。
よだれをたらしやすい傾向があるので、定期的に拭いて清潔を保ち皮膚病にならないようにしてあげてください。シワの部分に汚れがたまりやすいので、固く絞ったタオルなどで小まめに拭いてあげてくださいね。
シャンプー
適切な犬用シャンプーを使用し、毛並みや肌に合わせた温度のお湯で洗います。頻度は個体や被毛の状態により異なるため、獣医師のアドバイスを参考にするようにしてください。
耳掃除
マスティフは垂れ耳で通気性が悪いため、耳の中で炎症を起こしてしまった場合は悪化しやすくなります。定期的に見える範囲の汚れを取り除いてあげて下さい。「耳垢が増えた」「耳から悪臭がする」といった様子が見られる場合はすぐに病院へ。
歯磨き
犬の歯の健康は全体的な健康にも関わるため、定期的な歯磨きが必要になります。犬用の歯ブラシや、歯垢・歯石を取り除いてあげてください。歯ブラシが苦手な方は、歯磨き用のおもちゃやパウダー状の食事に混ぜるケア用品も販売されていますので、ぜひ取り入れてみてくださいね。
爪切り
犬の爪は適度な長さに保つ必要があります。必要に応じて爪切りを使用し、適切な長さに切り揃えましょう。
愛玩動物看護師 渡邉鈴子さん
日々のお手入れが自宅で行うのが難しい場合は動物病院やトリミングサロンなどにお任せすることも視野にいれるといいでしょう。
イングリッシュマスティフの価格や迎え入れる方法は?
価格
25万円~60万円
イングリッシュマスティフの平均価格は、およそ25万円~60万円となっています。性別や血統などによっては、もっと高額になることが予想されます。
迎え入れ方法
イングリッシュマスティフを迎え入れる方法としては、主に「ブリーダー」「里親制度」が挙げられます。
ペットショップで出会うことは難しいかもしれません。
2023年時点のJKC犬籍でもイングリッシュマスティフは登録されていません。海外から輸入する必要があります。
それぞれメリットとデメリットがありますので、自分に合った方を利用してくださいね。
マスティフの販売価格については下記の記事をご覧ください。
イングリッシュマスティフにおすすめのドッグフードは?
ドッグフードをメインで与えたい場合は、「総合栄養食」と表示されているドッグフードを選びましょう。これは水と一緒に与えるだけで、健康が維持できるドッグフードのことです。選ぶ際は原材料を必ず確認しましょう。主原料が「肉類」であることが望ましいですよ。
手作り食をメインで与えたい場合は、「一般食」と表示されているドッグフードがおすすめです。いわば「おかず」のようなものであり、トッピングとして利用することで手軽に栄養を追加することができます。
ドッグフードには高温で焼き上げた「ドライフード」や、水分量の多い「ウェットフード」などさまざまな食感のドッグフードがあります。歯や顎の状態、年齢・好みに合わせてフードを選択して下さいね。
ごはんを食べない・・・どうすればいい?
ご飯を食べない場合はいくつかの理由があり、主に「好みの味ではない・食べにくい」「体調不良や季節による食欲の低下」「食器や環境が気に入らない」「ストレスが溜まっている」「病気」などが挙げられます。
この場合は、以下の方法を取り入れてみてくださいね。
トッピングをしてみる
まずはドッグフードにササミなどをトッピングして与えてみて、食欲が改善されるかを確認してみてください。新鮮な生肉を原材料に利用しているドッグフードに切り替えるのも手ですよ。
フードを食べやすくする
食べづらさが原因の場合は、飼い主さんがひと手間加えてあげましょう。ドライフードであれば、ぬるま湯でふやかして香りを立たせるのも手です。ニオイで食欲を刺激することができます。
また、粒が大きいようであれば砕いてあげるのもいいでしょう。ウェットタイプとドライタイプを組み合わせれば嗜好性が高まり、また水分も一緒に摂取することができます。
食器や環境を変える
食べやすい食器に変更したり、食事する場所を変えてみるといいかもしれません。ストレスを抱えている場合もあるので、遊びや散歩の時間を増やして発散させるのもいいですね。
動物病院で診てもらう
食べない原因が病気の可能性もあります。口内炎などの痛みを伴う場合、食べたくても、食べられないのかもしれません。「好きなおやつも食べない」「ぐったりしている」「元気がない」といった様子が見られるようであれば、かかりつけの動物病院で診てもらいましょう。
イングリッシュマスティフは上級者向けの犬種
イングリッシュマスティフは本来気立てがよく物静かでおおらかな性格の持ち主ですから、きちんとしつけられていれば飼い主家族にとって素晴らしいパートナーになってくれます。時にしっかりとした管理がなされていない個体が事故を起こすこともあるため、国によっては飼育が規制されていることもあります。その意味では上級者向けの犬種といえます。
飼育環境を選びますが、責任感を持って飼育できる上級者の方にオススメしたい犬種です。