犬の免疫系の病気8種まとめ。症状や特徴、原因、治療法、対策法は?

犬 睡眠1
愛玩動物看護師
監修者:渡邉鈴子

栃木県生まれ。帝京科学大学にて4年間、動物看護学をはじめとした動物関連の科目を学び、2023年5月には愛玩動物看護師免許を取得。これまでにうさぎや猫の飼育経験あり。2024年にはペット栄養管理士の資格も取得。

犬も人間と同じで、免疫が低下すると様々な病気にかかりやすくなります。病気になると、一生付き合っていかなければなりませんよ。少しでも病気にかかりにくい体となるよう、免疫力をつけてあげたいですよね。

この記事では、犬の免疫系の病気8種について症状や特徴、原因、治療法をまとめました。

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犬の免疫系の病気1. 「アナフィラキシー」

犬 素材

病名 アナフィラキシー
症状 呼吸困難、嘔吐、意識障害、低血圧など
原因 ワクチンや食物

どんな病気?

「アナフィラキシー」とは薬物や毒物などの異物が体内に進入してきたときに起こる免疫の過剰反応のことです。重症になるとアナフィラキシーショックという非常に危険な状態になります。

ハチに刺されてアナフィラキシーになる例が有名ですね。

 

症状や特徴

アナフィラキシーは発症が非常に早いことで知られ、数分~数十分で急速に症状が現れます。主な症状は「呼吸困難」「嘔吐」「意識障害」「血圧低下」などで、処置が遅れると死亡することもあります。

 

発症原因

原因はワクチンなどの薬剤投与、毒を持つ生物との接触、アレルギー反応を引き起こす食物の摂取など多岐にわたりますが、予防接種などの薬剤による反応が最も多いです。

接触する回数が増える度に、発症の危険性が高まるという共通点があります。

 

治療法

直ちに注射や点滴を行い、ショック状態に対処します。その後は抗生物質や「ヒスタミン」を抑える治療を行います。

 

犬の免疫系の病気2. 「甲状腺機能低下症」

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病名 甲状腺機能低下症
症状 脱毛、むくみ、皮膚疾患、軽度肥満、神経症状など
原因 自己免疫が甲状腺を攻撃

どんな病気?

犬の甲状腺機能低下症は、体の代謝を活発にする役割がある甲状腺ホルモンの分泌量が減少することで起こる病気です。

甲状腺は気管の外側にあり、左右に一対存在しています。

 

症状や特徴

症状としては「胴体の左右対称性脱毛」「体温が低下し寒さに弱くなる」「全身がぶよぶよむくんだようになる」などの症状がみられます。

皮膚や毛の変化以外にも元気がなくなったり、顔のむくみにより悲しそうな顔になることもありますよ。

顔面神経麻痺を起こすこともあります。

 

発症原因

犬の甲状腺機能低下症の好発年齢は4~10歳とされ95%近くが後天性(遺伝が理由ではない)です。先天性(遺伝が理由)であることは極めてまれといえます。

体内に入ってきた異物を排除するための免疫系が自分の体の一部である甲状腺を攻撃することで炎症が起こり、機能が低下してしまうことが原因です。

甲状腺機能低下症には好発犬種があり、ゴールデン・レトリバー、ドーベルマン、ビーグルなどは注意が必要です。

 

治療法

体内で不足している甲状腺ホルモンを人工の甲状腺ホルモン製剤(レポチロキシンなど)を投与することで補います。

投薬後を始めて1~2週間で表情や活動性に良好な変化がみられ、1~4ヶ月で皮膚症状が治まっていきますが投薬は一生続けなければなりません。

レボチロキシンの過剰投与は甲状腺機能亢進症を引き起こす可能性があるため、獣医さんからの指示をしっかり守って投与を行いましょう。

 

犬の免疫系の病気3. 「クッシング症候群」

犬 病気

病名 クッシング症候群
症状 体重減少、多飲多尿、落ち着きがなくなる、皮膚の石灰沈着など
原因 コルチゾールの過剰分泌

どんな病気?

クッシング症候群とは「副腎皮質機能亢進症」のことで、コルチゾールという副腎から産生されるホルモンが、異常に分泌してしまう病気です。

コルチゾールは様々な役割があり、生命を維持するためにはとても重要なホルモンです。

 

症状や特徴

食欲が旺盛になりますが、体重が減少します。水を多量に飲むと同時に排尿量も増える多飲多尿になったり、落ち着きがなくなり活発に動きまわったりします。また腹部膨満がみられたり、皮膚の病変もみられることがあります。コルチゾールの過剰により糖尿病を併発していることもあります

 

発症原因

フードに含まれる栄養バランスの悪さや、副甲状腺に腫瘍やガン、傷などの変性が生じることでホルモンの分泌が過剰となり、甲状腺亢進症を引き起こすことがあります。高齢の犬に発症しやすいです。

犬のクッシングシンドロームは珍しいですが、甲状腺機能低下症の治療のために投与した甲状腺ホルモン剤が過剰だった場合に起きることもありますよ。

 

治療法

甲状腺ホルモン製剤を投与している場合は投与量を調整します。甲状腺に腫瘍がある場合は手術で切除する場合もありますが転移の部位によっては放射線などの治療を行います。

腫瘍が良性の場合は、片方の甲状腺のみを摘出することが多くあります。

副腎からのコルチゾールの分泌を抑制するためにトリロスタンを投与することもあります。

 

犬の免疫系の病気4. 「糖尿病」

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病名 糖尿病
症状 水や食べる量が増える、体重減少
原因 遺伝的要因、肥満、早食い、大食い

どんな病気?

糖尿病には2つの種類があります。Ⅰ型糖尿病は膵臓からインスリンが分泌されないことが原因で起こる糖尿病です。もう一種類のⅡ型糖尿病はインスリンが効きにくくなることで起こる糖尿病です。犬ではほとんどがⅠ型の糖尿病に該当します。

 

症状や特徴

「水を飲む量が増える」「尿の量や回数が多くなる」「食欲が増えるのに痩せる」などの症状が現れます。

悪化すると血液中のケトン体という有害な物質が増加して「糖尿病性ケトアシドーシス」という状態になり、命に関わることがあります。

合併症として、白内障や腎疾患、肝疾患を起こすことがあります。

愛玩動物看護師 渡邉鈴子さん
糖尿病になると免疫力が低下するため、細菌感染や膀胱炎などの病気にかかりやすくなります。

 

発症原因

遺伝的要因や肥満、感染、免疫介在性膵炎など、複数の要因が重なりあうことで発症すると考えられています。

好発犬種としてトイプードル、ダックスフンド、ゴールデン・レトリーバー、ジャーマン・シェパードなどがあげられます。

未避妊の雌の犬も糖尿病になりやすいといわれています。

 

治療法

糖尿病は、「インスリンの投与」「食事療法」「運動療法」などで治療していきます。

適切な食事の回数や内容を考えたうえでの食事療法や適度な運動に加え、生涯にわたってインスリン注射を続ける必要があります。
低炭水化物、低~中脂肪、高繊維食のドッグフードを与えましょう。

インスリンの投与は飼い主さんが行うことが多いです。しっかり獣医さんの指示に従い、投与を行いましょう。

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犬の免疫系の病気5. 「低血糖症」

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病名 低血糖症
症状 元気の低下、運動性の低下、ふるえ、嘔吐、昏睡など
原因 ホルモンバランスの異常、インスリンの過剰分泌

どんな病気?

低血糖症は血中の糖分濃度が著しく低下してしまう病気です。

 

症状や特徴

低血糖症が続いた時間や血液中の糖分濃度によって症状は多少異なりますが、「無気力になる」「体の下半身の麻痺」「痙攣発作」などが症状として現れます。

重度の低血糖の場合は、脳に障害が残ったり最悪死亡することもあるため注意が必要です。

 

発症原因

子犬の場合は「消化管内寄生虫症」「過敏性腸症候群」「パルボウィルス感染症」などの疾患を持つ犬が、長時間食事がとれないことがきっかけとなって低血糖症を発症します。

小型犬で下痢や嘔吐を繰り返している場合や、気温の低下も低血糖症を誘発する原因のひとつとなります。

成犬の場合は副腎皮質機能低下症や膵臓の腫瘍、敗血症(重度の感染症)などの疾患が原因で低血糖症を発症します。

過剰な運動や興奮状態、空腹が重なって起きることもありますよ。

 

治療法

主に、ブドウ糖の投与(口からの投与または注射による静脈投与)を行い治療します。

 

犬の免疫系の病気6. 「アジソン病」

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病名 アジソン病
症状 食欲低下、嘔吐、下痢
原因 副腎皮質からのホルモンが不十分

どんな病気?

アジソン病(副腎皮質機能低下症)は、副腎皮質機能亢進症(クッシングシンドローム)とは逆に副腎皮質ホルモンの分泌量が低下することで起こる病気です。

 

症状や特徴

アジソン病の症状は「急性」と「慢性」の2つありますが、なんらかのストレスを受けた後に「食欲の低下」「元気の消失」「嘔吐」「下痢」などの症状がみられます。

「慢性」の場合は「食欲低下」「元気がなくなる」「嘔吐、下痢」「体重低下」といった症状がみられ、良くなったり悪くなったりを繰り返します。

「急性」の場合は「急に元気がなくなる」「ふらついて倒れる」「ショック状態に陥る」などの症状がみられ、早急に治療をしなければ命に関わることがあります。

 

発症原因

副腎皮質からのホルモンが十分に分泌されないことが原因です。長期間に渡る治療や大量の合成副腎皮質ホルモン(ステロイド剤)治療を突然やめた場合(医原性)に起こることもあります。

 

治療法

ショック状態など「急性」の場合は緊急治療が必要です。「慢性」の場合は副腎皮質ホルモンを生涯にわたって投与する必要があります。

 

犬の免疫系の病気7. 「全身性エリテマトーデス」

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病名 全身性エリテマトーデス
症状 元気消失、食欲不振、発熱
原因 遺伝的要因、レトロウイルスの感染

どんな病気?

免疫反応の異常により、自分の体を攻撃してしまう自己免疫疾患の一種です。全身に起きる自己免疫性皮膚疾患で、再発しやすい病気です。

 

症状や特徴

「元気消失」「食欲不振」「発熱」などが主な症状で、多発性関節炎による四肢の跛行や、「脱毛」「紅斑」「潰瘍」など皮膚の症状がみられることもあります。

 

発症原因

原因は不明な点が多くはっきりとは分かっていませんが、遺伝的要因やレトロウイルスの感染などが考えられています。

細胞の核に対する自己抗体が作られ、その免疫複合体によって炎症反応を起こします。この免疫複合体が体の中の様々なところに沈着して組織を障害することで、全身性に様々な症状が起こります。

 

治療法

副腎皮質ホルモン剤(ステロイド)などの免疫抑制剤を用いて治療を行います。紫外線は症状を悪化させるため、避けなければなりません。

 

犬の免疫系の病気8. 「免疫介在性溶血性貧血」

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病名 免疫介在性溶血性貧血
症状 元気がなくなる、疲れやすい、息切れ
原因 免疫システムの異常

どんな病気?

免疫介在性溶血性貧血は、体に侵入した病原菌などを退治する免疫システムが赤血球を破壊して貧血に陥る病気です。

犬の溶血性貧血の中で最も有名な貧血ですが、この病気に罹っている犬の死亡率が約40%と高いことでも知られています。

 

症状や特徴

発症すると、「元気がなくなる」「疲れやすい」「すぐに息切れをする」などの一般的な貧血の症状が現れます。

他に、「多飲多尿」「食欲の低下」「嘔吐」「黄疸」などの症状がみられることもあります。

 

発症原因

体内に侵入するウイルスや細菌などの外敵を攻撃する免疫システムが、自分の赤血球を攻撃し破壊してしまうことによって発症します。

ウイルスや細菌の感染、抗生剤、ワクチンといったさまざまな薬剤が要因と考えられていますが、よく分かっていません。

 

治療法

赤血球を破壊する免疫システムを抑えるためにステロイド剤などの免疫抑制剤を投与します。

症状が重い場合は輸血をおこなうこともあります。輸血により症状が悪化する可能性もあるため、獣医師とよく相談してくださいね。

当たり前の習慣をつけよう!

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今回紹介した免疫系の病気はどの犬種もかかりやすい病気といえます。

免疫力が低下したり向上しすぎたりして起こる病気ですので日頃からのケアが難しいですが、「体に悪いフードを食べさせ過ぎない」「運動は毎日行う」など当たり前のことを心がけてあげることが大切ですよ。

愛犬といつまでも健康に過ごすために…

フード選びが愛犬の健康の鍵!

愛犬が健やかに暮らすためには、毎日の食事がとても重要です。ワンちゃんも私たちと同じように、日々の食事が健康に大きく影響します。適切なフード選びで、病気のリスクを低減し、医療費の負担も軽減できます。

多くの飼い主さんが、愛犬との楽しい時間にお金を使いたいと思っていますよね。そのためにも、毎日の食事から愛犬を守ることが大切です。

慎重にドッグフードを選んで、愛犬が長く健康でいられるようサポートしましょう!

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